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2024.05.15 11:00

【米国株ウォッチ】イーライリリーの競合分析、アムジェンとの比較

Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images

Jakub Porzycki/NurPhoto via Getty Images

米国の製薬会社イーライリリー株(ティッカーシンボル:LLY)の方が、競合のアムジェン株(ティッカーシンボル:AMGN)よりも、将来性を考えるとより良い選択だと私たちは考えている。両銘柄とも、肥満症治療薬市場に注力していることから、最近脚光を浴びている。
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イーライリリーの株価売上高倍率は、アムジェンの約5.9倍に対し、約20.4倍と高い評価倍率で取引されている。また、イーライリリーの方が収益成長率が高く、利益率も高い。

本稿では、今後3年間のリターンにおいて、アムジェンよりもイーライリリーの方が優れていると私たちが考える理由について述べる。また、過去の収益成長率、株価リターン、バリュエーションなど、多くの要因を比較している。

株価リターン

LLYは、2021年1月初旬の170ドルから現在の770ドル前後の水準まで355%という極めて強い上昇を見せたのに対し、AMGNは同期間に230ドルから現在の315ドル前後の水準まで35%の上昇にとどまっている。S&P500種株価指数がこの約3年間で約40%上昇したのと比べると、その差は歴然だ。

驚くべきことに、LLY株は過去3年間、いずれも市場全体をアウトパフォームしている。2021年のリターンは64%、2022年は32%、2023年は59%であった。しかし、AMGNの上昇は一貫しているとは言い難い。2021年のリターンはマイナス2%、2022年は17%、2023年は10%だった。これに対しS&P500のリターンは、2021年27%、2022年マイナス19%、2023年24%である。

製品分析

イーライリリーの売上高は2019年の223億ドル(約3兆4000億円)から2023年には341億ドル(約5兆3000億円)に上昇しており、アムジェンの売上高は同期間に234億ドル(約3兆6000億円)から282億ドル(4兆4000億円)に上昇している。
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アムジェンは、プラリア(Prolia)、オテズラ(Otezla)、テゼスパイア(Tezspire)、レパーサ(Repatha)など一部の製品の拡大が収益の伸びを牽引している一方、エンブレル(Enbrel)やニューラスタ(Neulasta)など一部の旧型薬剤の需要は軟調に推移している。また、アムジェンは昨年ホライゾン・セラピューティクスを買収した恩恵も受けた。アムジェンは、アッヴィが提供するヒュミラ(Humira)のバイオ後続品、アムジェヴィータ(Amjevita)を発表しており、これもトップラインの成長を強化することが期待されている。

アムジェンにとって、大きなゲームチェンジャーは肥満症治療薬のマリタイド(MariTide)かもしれない。同社は錠剤型から、注射剤にシフトすることを決めたが、アムジェンの経営陣はその結果に満足しているようだ。同社はマリタイドの後期臨床試験を計画している。

このアムジェンの注射剤は、肥満症治療薬の市場における競争が激化しているにもかかわらず、際立った存在になる可能性がある。例えば、この注射剤は、患者が治療を中止しても体重が増加しないようにすることが可能という特徴があり、服用回数も通常の錠剤より少ないと報じられている。なお、肥満症治療薬の市場は、2030年までに現在の16倍の1000億ドル(約15兆6000億円)を超えると予想されており、イーライリリーとノボ・ノルディスクがその大部分を占めることになるだろう。一方、アムジェンがマリタイドで成功すれば、ピーク時のマリタイドによる売上は50億ドル(約7825億円)を超えると思われる。
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翻訳=江津拓哉

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