直後にロシア軍の長距離兵器が飛来し、駐機中だったヘリのうち3機が爆破された。使われたのは、地上から発射されるイスカンデル弾道ミサイルだった可能性がある。
ベルディチ村周辺の接触線から西へ110kmほどのパウロフラード市近郊でのこの損失は、ウクライナ軍の小規模な航空戦力にとっては深刻な被害だ。それはまた、ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月目になる戦争のおよそ1000kmにおよぶ前線の全体で、ウクライナ側が十分な防空体制を確保できていないこともあらためて浮き彫りにした。
Mi-24攻撃ヘリコプター2機と随伴のMi-17強襲ヘリコプター1機は11日かその前日ごろ、日中の任務の途中に「前方武装・再補給点(FARP)」と呼ばれる場所に着陸した。
前線近くに設けられるFARPは、ヘリが安全に着陸し、燃料と弾薬を積んだ補給トラックが急行できるエリアだ。ヘリが迅速に、理想的には数分で満タンまで補給し、敵に狙われる前に離陸できるようにするのが目的だ。
ウクライナ軍のヘリコプターは連日、前線付近を低空飛行し、物資の運搬や負傷兵の搬送、あるいは数km先のロシア軍部隊に対する無誘導ロケット弾での攻撃などに従事している。その間、補給のためにFARP作戦も行っている。
全面戦争の開始から2年後まではFARPはそれなりに安全だった。ウクライナ側の防空兵器によって守られていたうえ、ロシア側の「キルチェーン」(目標の探知から攻撃の承認、実行、評価にいたるプロセス)も遅かったからだろう。
しかしその後、ウクライナ軍の防空弾薬は枯渇した。ロシア軍のキルチェーンは、新たな通信システムの導入などによって速くなった。英陸軍のブレア・バターズビー下級准尉は米陸軍訓練教義コマンドに寄せた論考で、ロシア軍は「新しい技術を用いてセンサーとシューター(射撃手)の連携を向上させている」と指摘している。