そんな中、人工知能(AI)による膨大な電力消費の解決策に、これまでほとんど使われてこなかった再生可能エネルギーである地熱を用いようとするスタートアップが現れた。地熱は、地中で自然発生した熱を利用して電気と暖房のエネルギーを供給している。
地熱の最大の問題の1つは貯留層を掘り当てることだが、ユタ州に本拠を置くZanskar(ザンスカー)は、機械学習を用いたAIモデルを利用してこの問題を解決しようとしている。掘削に莫大な費用が掛かるため、地熱は風力や太陽光に比べてコスト競争力が低く、米国では、地熱による発電割合は1%にも満たない。ザンスカーのAIモデルは、膨大な量のデータを分析することで、最適な掘削場所を見つけることを可能にしたという。
同社は、このモデルによってプラント建設費用を大幅に削減できるようになることを期待している。「我々は、地熱発電業界が過去10年間に発見したよりも多くの隠れた地熱資源をこの1年半で発見した」と、ザンスカーのカール・ホイランドCEOは話す。
同社は米国時間5月6日、Obvious Ventures(オブビアス・ベンチャーズ)が主導したシリーズBラウンドで3000万ドル(約47億円)を調達したと発表した。これにより、同社の累計調達額は、4500万ドル(約70億円)に達した。今回調達した資金は、探査の継続や、最初の発電所の建設に充当するという。ザンスカーは今後、発電所を顧客向けに建設する以外に、既存の地熱発電事業者と共同開発を行う計画だ。
オブビアス・ベンチャーズのアンドリュー・ビービは、探査コストを削減する技術こそがザンスカーの差別化のポイントだと主張する。「彼らは、世界中で地熱資源の探査コストを系統的に削減することができると確信している。それが実現すれば、我々は年中クリーンな電力を大量に手に入れることができるようになる」と彼は言う。