ポーランドのブワディスワフ・コシニャクカミシュ国防相は、ウクライナ当局が自国民を連れ戻すことに協力する用意があると表明。ポーランド政府が取り得る手段については「何でも可能だ」と宣言した。
これにより、現在ポーランドに住む数千人のウクライナ人が仕事を手離して軍隊に入隊せざるを得なくなる可能性が出てきた。この動きは倫理的な問題にとどまらず、ポーランド経済に大きな打撃を与える恐れもある。さらに、徴兵から逃れるため、かなりの数のウクライナ人がポーランドから出国するのではないかとの懸念も高まっている。
2022年2月にロシアがウクライナへの全面的な侵攻を開始して以降、ポーランドに移住した100万人を超えるウクライナ人のうち、37万1000人が徴兵年齢に当たる男性だ。今回の新法により、強制的な動員の対象となる可能性がある。
ウクライナ政府は先月、国外に滞在する18~60歳の男性国民に対する領事サービスを停止した。これにより、旅券(パスポート)など公的文書の交付を希望する国外在住のウクライナ人男性は遠隔で、または徴兵事務所に直接出向いて個人情報を更新しなければならなくなった。
2022年2月以降にポーランドに入国したウクライナ人の大半は、有効な身分証明書がなくても就労や公共サービスの利用ができる一時的な保護を認められていた。だが、この規定は6月30日に終了する予定で、延長の有無は明らかになっていない。こうした不確実性から、多くのウクライナ人が同国での滞在に不安を抱き始めている。
ポーランドの首都ワルシャワに住む30代のウクライナ人男性は匿名で取材に応じ、エストニアやドイツをはじめとする近隣諸国がウクライナ人の本国送還を否定していることを例に挙げ、ポーランド政府の方針によっては、同国での滞在を考え直すウクライナ人も出てくるのではないかと語った。その上で、徴兵から逃れたいウクライナ人男性は闇経済に関与したり、家族を連れて他国に移住したりしてでも、何としても祖国に帰らない方法を探すだろうと示唆。ポーランドは必要不可欠な労働力の一部を失うことになるかもしれないと指摘した。