1. ソロモン諸島に生息するコウモリ
南太平洋に浮かぶソロモン諸島の密林には、リーフノーズド・バット(顔に葉のような突起が密集しているのが名前の由来)という、カグラコウモリ属のコウモリが生息している。平行進化したことが実によくわかる生物の一例だ。東南アジアや太平洋全域の島々に広く分布するこのコウモリ群は、自然環境から同じような圧力を受けると、近縁種のあいだで、体の大きさなど重要な特徴が平行進化することを示している。
2024年3月に学術誌のEvolutionに掲載された研究では、系統樹が作成され、大型であることから近縁種だと考えられてきたコウモリの個体群が、実際には側系統(paraphyly)だったことが裏付けられた。要するに、これまでの考えに反して、直接の先祖が同じだったわけではないということだ。
この発見は、カグラコウモリ属の大型コウモリが、この個体群の歴史のなかで、最低でも2回は別々に進化したことを示している。これらのコウモリのあいだで、体の大きさが平行進化したことは、とりわけ興味深い。なぜなら、特定の環境下では、体を大型化しようとする選択圧が働くことを示唆しているからだ。その要因としては、餌を手に入れるため、あるいは、捕食者を回避するためといったことが考えられる。
さらに、複数の島々(時には同じ洞窟内)で同時に見つかった小型と大型の近縁種間では、異種交配が見られなかった。この事実は、強力な生殖隔離が急速に出現したことを示している。これは、孤立した環境では、複雑な進化的変化が非常に速やかに起きることを浮き彫りにしている。
2. カリブ諸島に生息するアノールトカゲ類
カリブ諸島に生息するさまざまなアノールトカゲ類もまた、平行進化を遂げた生物の好例だ。それぞれの島で、独特のアノールトカゲ集団が生まれ進化してきたが、そうした集団の多くが、驚くほど似通った身体的特徴をもっているのだ。これらのアノールトカゲ類は、異なるエコモルフ(ecomorph:生息する空間ごとに異なる形態や行動)を進化させてきた。つまり、樹幹や樹冠、草地など、特定のマイクロハビタット(微小生息域)に適応した、共通の表現型を持つ種の集まりなのだ。
これらのアノールトカゲは、海によって物理的に隔てられ、別々に生息しているにもかかわらず、その特定の生態学的な役割に沿った平行適応を示している。例えば、別々の島に生息する「幹-地上生活型(Trunk-ground)」のアノールトカゲは、それぞれが別々に進化したが、どれも四肢のサイズが大きくなった。手足が大きければ、地上を素早く移動したり、大きな幹を上ったりするのに適している。
一方、「細い枝先を好むアノールトカゲ(twig anole)」は、四肢が短く、体も小さく進化した。おかげで、枝が多くて入り組んだ環境でも、機敏に動き回ることができる。
こうした、マイクロハビタットに応じた特定の適応は、自然が進化の経路を正確に変えられることを裏付けている。そうした進化の経路は、それぞれの環境がつくり出す独特の課題に応じた微調整を行うなかで、平行した道を描いたのだ。
カリブ海のアノールトカゲに見られる平行進化は、環境からの圧力が、進化の結果を左右していることの証だ。それと同時に、自然淘汰がもつ驚くべき力をも浮き彫りにしている。種は、似通った生態学的困難に直面すると、似通った解決策を編み出すのだ。
カリブ海に生息するアノールトカゲの研究は、生命の多様性をかたちづくる進化の、微妙だが強力な力に光を当てるものだ。そして、生命体がそれぞれのニッチ(生態的地位)において、いかに適応し繁殖していくのかについて洞察を与えてくれる。
こうした平行進化の例は、生物多様性に関する我々の理解を深め、さらには、適応を通して生き抜いていく自然の独創性について思い起こさせるものだ。
(forbes.com 原文)