VC

2024.05.19 13:30

【日本VC名鑑】 2023年設立ファンド編

「日本一VCに詳しい写真家」 の観察眼

Forbes JAPANの連載企画をきっかけに、2015年からこれまで200人以上のベンチャー投資家を撮影してきた。当初、私は投資家に対して「お金儲けをしている人たち」という印象をもっていたのだが、今その考えは大きく覆されている。

起業家が漫画の主人公だとしたら、投資家はその引き立て役だ。資金で支援するのは一緒だけれど、それ以外でどんな役割を担うかは人それぞれ。特に美しいと思うのは、起業家との関係性のなかで、上の立場から圧力をかけるのではなく、対等に付き合える空気感をつくり出す投資家だ。

私が定期的に撮影しているDNX Venturesマネージングパートナーの倉林陽氏を例に挙げよう。彼は学歴も経歴もピカピカのエリートで、実績豊富な業界内の有名人物。すでに成功している立場なので、自分を改める必要はないのだが、現在も大学のエグゼクティブ・マネジメント・プログラムに通っていたり、高額なコーチングを受けたりしている。今でいう「ソフト老害」にならないよう、自分自身が常に教わる側に身を置くことで、新しい学びを得ながら人間性を高めて、投資先に貢献できるように努めているのだ。

突き詰めると、投資家とは、自分にできないことを他人がやってくれると、自己拡張したような喜びを感じる生き物なのだ。お金を預けるという手段を通じて、幸福の循環を回そうとしている。うまくいっている投資家は、特にその資質が高いように見える。だから起業家に対してすごくリスペクトを示すし、いいパスを出し合ってお互いを高めている。

今風に表現するならば、「推し活のプロ」といえるのではないか。まだスポットライトを浴びていない駆け出しのときから、時に浮気することはあっても、一貫して起業家を信じて、応援し続ける。そんな投資家と起業家の関係性が美しいと思うし、これからもレンズを通じて眺めていきたい。


平岩 享◎時代の顔となるポートレートを数多く撮影。Forbes JAPANでは 「私がこの起業家に投資した理由」を2015年から担当している。

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文 =フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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