表面的には、データは心強いものだ。このところ前年割れが続いていた中国の輸出は1~3月に前年同期比1.5%増となった。金額ベースでは4.4%の伸びとなった。だが、この四半期の数字は、好調だったのは1月だけという事実を隠している。2月と3月は高水準だった1月から減っており、3月の輸出は1月の水準を9%下回った。各月の数字に注目すると、四半期全体の数字が輸出の改善を意味するのか疑問符がつく。
中国の主要貿易相手国が発表している貿易統計にある、中国からの輸入に関する数字も、中国の輸出改善の持続性に疑問を投げかけている。例えば、米商務省のデータでは、米国の3月の中国からの輸入は半年前から26%減少している。また、昨年の欧州連合(EU)の中国からの輸入は前年比18%減だったと欧州委員会(EC)の報告書にある。日本も同様で、昨年の中国からの輸入は前年比11%減だった。この種のデータ比較はどれが正しいということなく、一致することはほぼないが、中国の輸出の改善が見た目ほど力強くなく、また確実でもないことをはっきり示している。
中国の輸出改善の考えられる理由は、数字で示されているかもしれない勢いをさらに削ぐものだ。輸出の急増が本当に起こったとすれば、それは為替市場での人民元安と中国のデフレ傾向が相まってもたらされた価格優位性によるものである可能性が高い。
米紙ウォールストリート・ジャーナルの最近の試算によると、この2つの傾向により、世界市場における中国製品のコストは2年前から14%ほど下がっているという。この価格優位性は中国の輸出にとって一種の「ロケット燃料」となっていると同紙は指摘した。だが、上記のデータから明らかなように、この価格優位性があっても、米国や欧州そして日本の企業が調達先を中国から多様化する動きは続いている。
最近の価格優位性が「ロケット燃料」になるかどうかを疑う理由はさておき、この種の要因が中国が望んでいるものなのか、あるいは必要としているものなのか疑問視するのはもっともだ。結局のところ、中国は自国の経済をより高価値の製品に移行させることを目指しており、最も価格指向型の付加価値の低い製品からの脱却を図りたいと考えている。
機能しているとすればだが、最近の価格優位性によって中国の生産は同国が望む方向ではなく、衣類や靴、玩具といった単純な製品に特化していた過去と同じような発展途上の状態に戻るだろう。中国が、アジアの新興国の犠牲の上に輸出を伸ばしたのは間違いなくこのためだ。この動きは数字につながるかもしれないが、国際通貨基金(IMF)が長い間中国に推奨し、中国政府が長期的な目標として掲げてきた中国経済発展の次のステップを妨げる。
仮に中国が経済を浮揚させようとそうした逆行的な「解決策」を受け入れたとしても、このような輸出成長の維持に必要な人民元安とデフレがいつまでも続くとは思えない。さらに大きな意味を持つのは、これは中国が経済繁栄を取り戻す取り組みにおいて、進むべき方向でもなければ、進むべきでもないということだ。中国が抱える巨大な経済問題の解決策には決してならない。
(forbes.com 原文)