セルビア政府にとっては、官僚的な欧州機関と長期にわたって協議するより、比較的短期間で建設が完了する中国との社会基盤整備計画を発表する方が「簡単」で、地元の政治家や市民からも喜ばれる。自国が掲げる「一帯一路」構想の下で、中国はインフラ建設を巡って受け手に不当な債務負担を強いていると他国が一斉に批判する中、セルビア人は中国による建設を歓迎しているのだ。
フォーブス・セルビアの編集者イワン・ラダクは電話取材で次のように語った。「地元市民の立場からすれば(欧州より)中国と何かを開発した方が好都合だ。市民にとっては当然、高速道路がないよりはあった方がいいからだ」。さらに、中国の国営企業と民間企業の双方が行っている投資も、セルビアの製造業を活性化し雇用を創出する点で歓迎されていると述べた。
14億人を超える世界第2位の人口を擁する中国は、ここ数十年間で爆発的な成長を遂げ、近年ではさらなる成長と影響力の拡大を求めて世界中を模索している。アジアの経済大国である中国は、欧州の内陸国セルビアへの資本投下によって、同国で最大の投資国の1つにのし上がった。
中国とセルビアの国力には絶大な差がある。セルビアの人口は700万人弱で、中国・上海の人口の3分の1にも満たない。セルビアの1人当たりの所得は上海の半分以下だ。一方、ロシアによるウクライナ侵攻を巡っては、中国もセルビアもロシアとの関係を維持しようとしてきた。
セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領は8日、首都ベオグラードで習主席を迎え、「われわれは今日、歴史を刻んでいる」と表明。両国は今回の会談で29件の協定を結んだ。習首席がこの日にセルビアを訪問したのは、コソボ紛争が激化していた1999年、米国が在ベオグラード中国大使館を空爆してからちょうど25年に当たる日だったからだ。米国は当時、誤爆を認め中国側に謝罪した。