セルビアに投資する中国企業には、米鉄鋼大手USスチールがかつて所有していた経営難の鉄鋼事業を引き継ぎ、現在は5000人の従業員を抱える河北鋼鉄集団(HBIS)や、中国国営鉱業大手の紫金鉱業などがある。英ロイター通信によると、紫金鉱業は2018年、セルビア東部ボルの銅採掘施設に12億6000万ドル(約2000億円)を投資し、63%の株式を取得することで合意。2021年にクカルペキ銅金山を開鉱した。中国の大富豪、秦栄華が創業した自動車部品メーカー敏実(ミンス)も、セルビアに1億ドル(約160億円)以上を投資している。
中国とセルビアの貿易は、7月1日に発効する両国の自由貿易協定(FTA)により、一層拡大すると見込まれている。先述のラダク編集者は、中国とセルビアの貿易は依然として中国側の黒字だが、かつてはわずか3%だったセルビアの輸出が、現在では約20%を占めていると説明した。
だが、中国とのFTAを巡っては、セルビア国内でも意見が分かれているという。セルビア人の中には、同国は生産量という点では規模が小さすぎ、中国から地理的に離れすぎているため、セルビア企業よりむしろ中国企業が恩恵を受けると批判する人もいる。セルビアから中国への輸出は主に一次産品と中国所有の工場で製造された製品だ。「中国市場に関する情報不足」もセルビア企業の足かせになっているとラダクは指摘する。
ラダクはセルビアの日刊紙ダナスとブリツの元記者で、経済分野で20年以上の報道経験を持つ。同編集者は非政府組織セルビア地方経済開発連合(NALED)で、国内のビジネス環境の改善に取り組んだ経験もある。
(forbes.com 原文)