もちろん、バフェット率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事の株式への投資から生んだ利益というのは、「紙の上」のもの(含み益)ではある。しかし、これらの未実現利益はアジア3位の経済大国、インドの政財界の要人たちを奮起させており、インド企業の経営改革を促す方向に働くかもしれない。また、バフェットによる日本の商社株での成功は間接的に、韓国の政府や企業に対して企業慣行の国際標準化に本腰を入れるよう促す格好にもなっている。
インドへの注目度があらためて高まったのは、バフェットが先週、ナレンドラ・モディ首相の経済へ時宜を得たエールを送ったのがきっかけだ。バークシャーの株主総会で投資家から質問されたバフェットは、インド市場には「未開拓の」機会があるかもしれないと答え、さらに「インドのような国にはたくさんの機会があると確信している」とも語った。
あまり深く掘り下げた発言ではない。だが、ここでの「インド」を2020年の「日本」に置き換えて考えてみたらどうか。バフェットは同年、日本の5大商社株の大量保有を明らかにし、投資家をあっと言わせた。
世界で最も名高いバリュー投資家が、デフレに悩まされ、高齢化が進む国に賭けたことのインパクトは、いくら強調してもしすぎることはない。しかもその対象は、ほとんど忘れかけていた、いわゆる「オールドエコノミー」のコングロマリット(複合企業)5社だった。だが、この賭けは文字どおり的中し、日経平均株価は今年、1989年につけた史上最高値を更新した。
もっとも、日本株上昇のきっかけをつくったのはバフェットではない。それは日本銀行のマイナス金利政策であり、超円安であり、また日本政府によるコーポレートガバナンス(企業統治)改革だった。しかし「バフェット効果」によって、インドに関心をもつ投資家はモディの経済への投資機会を探ることになるだろうし、モディの政府は企業のアップグレードで日本を参考にしようとするだろう。