郷愁を誘う音楽に対して年長者が特に敏感なのは、それが強い感情とそれにともなう記憶を呼び起こすためだ。高齢者は若い成人と比べて、青春時代の歌に対してより強い感情的反応を示すことを研究は示している。この感情的つながりは記憶力の向上につながる。さらに、彼らは若い頃の歌について曲名、歌手、歌詞にいたるまで詳細をよく覚えていることが多い。
懐かしい音楽は人間関係の幸福度も高める。Journal of Social and Personal Relationshipsに掲載された2022年の研究によると、ロマンチックな郷愁を誘う音楽を聞いた人が、別の音楽を聞いた人よりも、パートナーとの親近感と満足度を高く感じていると報告したという。
3. 人生の継続感と目的
懐かしい音楽を共有することで、世代間のギャップを埋め、人生の継続感と目的感を育てることができる。過去の経験は自分が何者であったかを具現化し、音楽に誘発された郷愁は人生の物語を思い出させる強力なリマインダーになる。聞き慣れた歌は、私たちを人生の重要な瞬間にタイムスリップさせ、自分の価値、大志そして今の自分を作った体験を思い出させる。Cognition and Emotionに掲載された2020年の研究によると、郷愁は人の自己連続性、すなわち自分の過去と現在と未来がつながっているという感覚を強化するという。
この首尾一貫感覚(sense of coherence)は、心理的な健康にとって不可欠だ。自分が何者であったのか、自分が大切にしてきた価値が何だったのかを思い出させることによって、郷愁を誘う音楽は、私たちが現在を生き抜き、未来の進路を決める手助けをする。
だから、次に落ち込んだり孤立していると感じたときは、お気に入りの懐メロのプレイリストを作ることを考えよう。音楽であなたを喜びとつながりのときへとタイムスリップさせよう。愛する人とプレイリストを共有し、それを会話や共通の思い出のきっかけに使おう。
郷愁は、過去の楽しい体験を思い出させることで、新たな体験を生み出し、充実した人生を求めて明るい未来への懸け橋を作る意欲を私たちに起こさせることができる。
(forbes.com 原文)