NDVは、前身のVCであるNTTインベストメント・パートナーズが2008年に立ち上げた1号ファンドを機に、運用総額1050億円規模で7つのファンドを運営し、国内外約200社に出資を行ってきた。国内投資先スタートアップについては、オンライン診療などを提供するメドレーやグルメサイトRetty、ソフトウエア品質検査サービスを手がけるSHIFTをはじめ、27%がIPOを果たすなど成果を出している。
一方、課題は15年間で8件にとどまる、NTTグループへのM&A(合併・買収)件数だ。NDV代表取締役社長の安元淳は「米グーグルは月1件実施して企業価値を高めている。我々も同様のペースでM&Aを行い、グループ全体の成長を促進させる『戦略的リターン』を重視していく」と話す。
今後のスタートアップ投資では出資比率を上げていく。これまでの出資ラウンドは、主にミドル・レイターステージで、平均出資比率は2〜3%ほど。今後はM&Aを見据えて「5〜10%へ比率を上げて、リード投資家になっていくことが重要」(安元)という方針だ。
このNDVのM&A戦略を加速するために重要な役割を担うのが、23年7月にNTTドコモに新設された新事業開発部だ。課題だったNDVとNTTドコモの連携について、74人の同部内の一部チームが両者の橋渡しを担うカタチだ。NDVは日米合わせて20人の組織で、リソースの大幅増強となる。
目下、取り組んでいるのは「ミッシングピースの洗い出し」だ。NTTグループの企業や各事業部が掲げている目標を実現、達成するために足りないピースは何か。LP投資家として出資してきた独立系VCファンドとともに、それを実現できるスタートアップを世界中から探し出していく。
まずは年1件のM&Aを目標に掲げているが、その先にはグローバル規模の企業創出も見据えている。
「15年間、さまざまな人間がNTTグループからNDVに異動し、現場を経験した。今やその人材が経営陣をはじめ、法人営業や事業開発の部門にも在籍する。機動的にM&Aを仕掛けていく基盤はすでにできている。そして出資して終わりではなく、我々のリソースや1兆円という予算を積極的に投入することで海外への挑戦も支援していく」
安元 淳◎1999年日本電信電話入社。法人企業向けソリューション営業に従事した後、NTTレゾナントでWebサービスの企画や開発、新規事業立ち上げなどに約10年間携わる。2012年にNTTドコモ・ベンチャーズに参画。18年にNTTドコモで主にスポーツやエンターテインメント分野の新規事業企画、開発を担当。23年6月より現職。