宇宙

2024.05.10 19:00

太陽の渦巻くプラズマを捉えた驚愕の最新動画、探査機が接近撮影

ESAの探査機の極端紫外線撮像装置(EUI)で撮影した、太陽の下層大気(彩層)から高温のコロナへの遷移層の太陽活動(ESA & NASA/Solar Orbiter/EUI Team)

欧州宇宙機関(ESA)の太陽探査機ソーラー・オービターが、水星の公転軌道より内側となる太陽地球間(約1億5000万km)のわずか3分の1の距離から太陽の活動を詳細に捉えた動画が公開された。

2023年9月27日にソーラー・オービターに搭載の極端紫外線撮像装置(EUI)で撮影されたこの動画には、下層大気の彩層と外層のコロナとの間の遷移層で活発に起きているさまざまな風変わりな太陽現象が記録されている。毛髪のような構造は、太陽の内部から現れる磁力線に沿って移動するプラズマ(高温の電離ガス)でできている。

比類のない観測

なぜ太陽の外層大気のコロナが表面の光球より何倍も高温なのかは、太陽科学の大きな謎の1つとなっている。ESAと米航空宇宙局(NASA)が主導する国際共同ミッションとして2020年に打ち上げられたソーラー・オービターは、太陽に関する比類のない観測を可能にする、EUIを含む10種類の科学機器を搭載している。ミッションの目玉としては、これまでのどの探査機よりも近くからの太陽画像の撮影、太陽の南北極域の初の近接撮影、太陽風の組成測定と表面の発生エリアとの関連づけなどが挙げられている。


驚くべき特徴的構造

今回の最新動画では、至近距離からでしか確認できない太陽表面の驚くべき特徴的構造のいくつかをハイライトし、注釈を加えている。動画が始まると、画面左隅に「コロナモス」と呼ばれるレース状の構造が見える。このモス(苔)構造は通常、プラズマで満たされた半環状の磁力線の束「コロナループ」の足元に現れる。

次に、太陽の縁の水平線上に「スピキュール」と呼ばれる、棘のように先が尖った形状の構造が見られる。彩層の下部から噴出するプラズマのジェットで、高さが1万kmに達するものもある。

動画再生22秒後、画面中央付近で別の現象が起こる。光球から噴流(プルーム)が彩層の中へ高く吹き上がった後、光球に向かって落下するのが見える。噴流の大きさは地球の直径ほどもある。

動画の終盤には、また別の太陽現象「コロナレイン」が捉えられている。名前はレイン(雨)でも水ではなく雨滴状のプラズマの巨大な塊で、温度が100万度のコロナの中を上昇して冷却したプラズマが1万度ほどまで冷えて塊となり、重力により雨滴のように彩層へと流れ落ちている。

太陽の接近観測を行っているESAの探査機ソーラー・オービター(左)とNASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブを描いた想像図(Solar Orbiter: ESA/ATG medialab; Parker Solar Probe: NASA/Johns Hopkins APL)

太陽の接近観測を行っているESAの探査機ソーラー・オービター(左)とNASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブを描いた想像図(Solar Orbiter: ESA/ATG medialab; Parker Solar Probe: NASA/Johns Hopkins APL)

今回の動画で見ることができる太陽現象で生じるエネルギーの大半は、太陽風(荷電粒子の流れ)となって宇宙空間に放出される。ソーラー・オービターは、2018年に打ち上げられたNASAの太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブと連携して、太陽風の測定と追跡調査を行っている。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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