瀬戸内エリア内外の起業家やアトツギをゲストに招き、瀬戸内・中四国特化型ベンチャーキャピタル「Setouchi Startups」の共同代表、藤田圭一郎と山田邦明がVC目線でゲストのビジネスストーリーを深掘りします。Forbes JAPAN Webでは、毎週水曜夜21時〜配信しているYouTubeチャンネルから、月2回番組の模様をお届けしていきます。
今回は、住宅業界向けSaaSを手がけるビズ・クリエイション(岡山市)の代表取締役 初谷昌彦さんをゲストに迎えた回をご紹介。倒産間際のハードシングスを乗り越え、創業から17期目を迎えた同社の起死回生のストーリーをお届けします。
毎月最大2300万円の赤字 それでも諦めるという選択はなかった
藤田:今回のゲストは、岡山を代表するスタートアップ経営者である株式会社ビズ・クリエイションの初谷昌彦さんです。
初谷:私は2008年、25歳の時にビズクリエイションという会社を立ち上げました。広告代理店として創業し、創業時からずっと住宅業界に特化して地場の工務店や住宅会社の集客支援を行ってきました。
2017年にKengakuCloud(ケンガククラウド)という住宅会社の集客を支援するためのSaaSの開発運営をはじめて今に至ります。
Kengaku Cloudは、住宅会社の集客活動をワンストップで効率化するSaaSクラウドツールです。例えば、住宅展示場に行く、モデルハウスに行く、完成見学会に行く、相談会に行くなどのエンドユーザーがその会社に初めて行く時の接点を作っているサービスです。
一般的には、住宅会社が集客をする際、企画や制作・告知を住宅会社の営業の方が兼務で行っていますが、そこをもっと簡易的にすることをKengaku Cloudで実現しています。2024年4月時点で導入企業数が1700社ぐらいになっており、ここ数カ月で急激に増えました。
藤田:でも簡単に爆伸びしたわけじゃないと言うことですよね。
初谷:そうなんです。
2017年にKengaku Cloudを始めた時は、資金調達をしていわゆるイケイケのスタートアップみたいになりたいと思い、ベンチャーキャピタルから調達をする方向に動いていたんです。
調達がいくつか決まっていく中で、計画通り採用も進めて最大43名ぐらいまで増えていましたが、売上はそう簡単に伸びませんでした。むしろ元々の広告事業を放っておいたので、どんどん売上が減りながら人は増えていく状態だったんです。
山田:売り上げが下がっていっている時が、メンバー数のピークになっているんですね。
初谷:人が増えて、売り上げはどんどん減っていった結果、毎月最大2300万円ほどの赤字が出ていた時もありました。
とあるベンチャーキャピタルにも交渉していましたが、うまくいかず調達が難しくなってしまい、結果的に43人いたメンバーから6人まで絞ったのが2019年の春でした。
全員と面談をして、申し訳ないと謝りました。みんなが悪いわけではないけれど、どうしても雇いきれなくなったことを話しました。
山田:今思うと、どうにかできたと思うタイミングはありましたか?
初谷:今思えばありますが、実際にそのタイミングでそれができたかと言うと、何度その時に戻っても同じことをすると思います。自分の精神状態や、世の中の流れなどの色々なものが合わさってその答えになっているので難しかったかなと思います。