起業家

2024.05.09 09:15

創業期の失敗と成功例に学ぶスタートアップ経営術

4月25日、Forbes JAPANが主催する創業3年以内のスタートアップ起業家・経営陣を対象としたイベント「RISING STAR Meet-up 2024」が開催された。約380人のスタートアップ関係者が集まった本イベントでは、「先輩起業家に聞く! 創業期の成功と失敗談」と題したトークセッションを実施。過去にForbes JAPANの「日本の起業家ランキング」にランクインした起業家など7人が登壇し、実体験を交えながら後輩起業家たちへアドバイスを送った。今回はその模様を一部抜粋してお送りする。
 
登壇者
中島徳⾄|Global Mobility Service(日本の起業家ランキング2020 6位)
佐渡島隆平|セーフィー(日本の起業家ランキング2021 1位)
宮⽥昇始|Nstock / SmartHR(日本の起業家ランキング2022 1位)
⻑尾 昂|京都フュージョニアリング(日本の起業家ランキング2024 4位)
⼭野智久|アソビュー(日本の起業家ランキング2024 10位)
岡井⼤輝|Luup(日本の起業家ランキング2024 トップ20)
⻄和⽥浩平|アスエネ(2021年度 RISING STAR AWARD受賞)
 

——まずは「創業期の失敗」について聞いていこうと思います。中島さんからお話しいただけますか。
 
中島:シリーズBの資金調達が、失敗の中でも苦しかったですね。手がけるビジネスモデルの前例がないうえ、それを海外に展開していくということで、投資家や事業パートナーから理解をなかなか得られませんでした。100社にあたって、1社から投資してもらえるかどうかというイメージでしょうか。国内の投資家に至っては海外市場のイメージがつかないということで投資委員会を通らず、資金を集められなかったのは悔しかったですし、孤独感に苛まれて落ち込みました。
 
宮田:SmartHRは、現在の人事労務を扱うSaaSにたどり着くまでに10回ほどピボットしました。そのどれもが、自分たちのつくれるものから考えて生み出したサービスだったんです。顧客が本当にほしがっているものをつくれていなかったことが、最大の失敗でした。当初はユーザーヒアリングや課題の検証をやっておらず、途中からやり始めたものの、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の感覚を掴むにはある程度やってみて慣れるしかないと思いますね。



西和田:経営でコントロールできないリスクをとってしまったことが、いちばんの失敗だったと考えています。いまはCO2排出量を可視化するクラウドサービスを提供しているのですが、実はその前に再生エネルギー特化の電力事業を手がけていました。創業から1年半ほどで数十億円という売り上げに達したのですが、電力危機によって調達価格が上がってしまい、眠れない日々が続くということが起きてしまいました。原油やエネルギーの価格はコントロールできないので、事業で扱うには危ないと感じましたね。
 
——各社、それぞれに失敗の仕方が異なりますね。では失敗に気づいたあと、どうやって乗り越えたのでしょうか。佐渡島さんと長尾さん、いかがでしょう。
 
佐渡島:ハードウェアをつくってから「このプロダクトを使えるお客さんは誰か」と探してしまい、最初は失敗しました。Who・What・Howと課題を見つけるべきところ、Howから始めてしまったのです。そこから「お客さんが解決したい課題、ジョブは何か」を見つけようと考え、膝詰めでお客さんの現場へ赴きました。ジョブにフォーカスして設計や売り方を見直していったことで、どんどん売れるプロダクトにすることができました。
 
長尾:スタートアップはやりたいことがあって起業しているので、ある程度プロダクトアウトになるのは仕方がないことだと自分は考えています。我々の会社は一定のカテゴリのお客さんにサービスを提供しようと決めていたので、その対象となる方々としっかり対話して、失敗を軌道修正していきました。その結果、3回目のピボットで顧客のニーズを掴めたように思います。


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文=加藤智朗 写真=大星直輝

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