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2024.05.09 13:00

「低コストな投信」のバンガード、追加の手数料導入で進む「競合との同質化」

安井克至
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Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

バンガードは50年近くにわたり、手数料を徹底的に削減することで投資に革命を起こした、低コストの資産運用会社としてその名を馳せてきた。

資産総額8兆6000億ドル(約1335兆円)を誇るバンガードは先日、電話でブローカーを通じて同社のETFや投資信託を取引する際に25ドル(約3880円)の取引手数料を請求すると顧客に通知した。この新手数料は今年の7月1日から適用される。同社はすでに、バンガードが管理していない金融商品を電話で売買する場合には1取引につき同じく25ドルの手数料を徴収していた。

「この手数料を払っているのは、おそらく生涯バンガードの顧客で、インターネットが苦手なリタイア世代でしょう」と話すのは、The Independent Vanguard Adviser誌の編集者兼創設者のジェフ・デマソだ。「そのような電話対応に経費がかかるのはわかりますが、長年の顧客であった人たちに損害を与えていることに変わりはありません」

バンガードの広報担当者は、「今日行われている投資信託とETFの取引の大部分はオンラインで行われています」と述べ、オンラインでの取引は依然として手数料無料のままであり、近年ウェブサイトとアプリのデジタル体験の刷新に投資してきたと付け加えた。

「バンガードは、より安全で、よりシンプルで、よりシームレスなデジタル取引に顧客が移行するのを支援することにコミットしており、手数料率などを含め、当社のブローカーサービスや商品を常に評価しています」と広報担当者は声明のなかで述べる。「ウェブとモバイルにおけるこうした近代化の取り組みを通じて、顧客満足度は年々着実に向上し、現在では過去最高を記録しています」

バンガードは長らく金融サービス全般において最も低コストのプロバイダーとして知られてきたが、この新しい料金制度により、競合他社と肩を並べることになる。

チャールズ・シュワブやモルガン・スタンレーが運営するETradeでも、同じく25ドルのブローカー・サービス料がかかる。また、フィデリティは具体的な金額は公表していないが、「フィデリティの担当者と取引する場合は、値引きや手数料が適用される場合がある」と述べている。バンガードの口座閉鎖処理にかかる手数料の100ドル(約1万5500円)は、ETradeの75ドル(約1万1000円)、チャールズ・シュワブの50ドル(約7700円)よりも高い。

ペンシルベニア州マルバーンに本社を置き、1975年に故ジョン・ボーグルによって設立されたバンガードは、常に同業他社とは異なるブランドを確立してきた。
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翻訳=江津拓哉

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