ビジネス

2024.05.09 13:00

「低コストな投信」のバンガード、追加の手数料導入で進む「競合との同質化」

しかし、バンガードが提供する金融商品の加重平均した管理手数料率(信託報酬)は0.08%で、業界でも低い水準にあるが、ブラックロックやフィデリティのような競合が運用するインデックスファンドも、現在では同等か、さらに低コストで提供されている。S&P500に連動するフィデリティ500インデックス・ファンド(FXAIX)の運用総額は5120億ドル(約79兆円)で、手数料率は0.015%であるのに対し、バンガードの1兆1000億ドル(約170兆円)規模の500インデックス・アドミラル・シェアーズ(VFIAX)の手数料は0.04%で、2.5倍以上高い。

バンガードの管理手数料率から計算すると、同社は8兆6000億ドルの運用資産から年間で約70億ドル(約1兆円)の利益を得ていることになる。その他の追加的な手数料は、同社のトップラインに大きな影響を与えることはないだろう。

バンガードの最も裕福な顧客は、手数料が免除されている。100万ドル(約1億5000万円)以上の資産を預ける顧客(つまり、管理手数料を多く負担する顧客)は、ブローカーと手数料無料で取引することができ、500万ドル(約7億7000万円)以上のさらに大口の顧客は口座閉鎖手数料を支払う必要はない。

それ以外の顧客に特別な配慮をする負担は、もはや割に合わないとバンガードが判断していることは明らかで、これは近年同社が行ってきた業務合理化の動きを引き継ぐものである。バンガードは、明細書やその他の資料を郵送で受け取ることを選択する口座保有者に年間25ドルのサービス料を請求し、バンガードが以前運営していた旧型の口座を新しいものに切り替えていない顧客には、運用する投資信託ごとに年間で25ドルの料金を請求している。

「バンガード社内では、手数料を使って人々の行動を誘導しようとする動きがあるようだが、これはバンガードらしくない」とデマソは話す。

翻訳=江津拓哉

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