32カ国・113組のカップルを調査した仏INSEAD経営大学院の准教授が研究結果を解説する。
日本でも、共働き夫婦が増えている。ふたりが支え合いながら子どもを育て、共にキャリアアップし、充実した家庭生活を送るにはどうすればいいのか。
仏INSEAD経営大学院のジェニファー・ペトリリエリ准教授はその答えを求め、32カ国・113組のカップルを調査。『デュアルキャリア・カップル 仕事と人生の3つの転換期を対話で乗り越える』(英治出版、高山真由美・訳)を出版した。自身もフランスでデュアルキャリア人生を謳歌するペトリリエリが語る。
欧州では過去20〜30年にわたって女性の社会進出が進み、ふたりがキャリアをもつ「デュアルキャリア・カップル」が増えてきた。その結果、キャリアや人生を2人で一緒に考えていくべきだという考えが定着した。
欧州でもかつては現在の日本のように、キャリアは個別に考えるものだとみなされていた。だが、特にこの10年間、社会の認識が大きく変わった。
なぜ、「キャリアはふたりで高めていくもの」という考え方が重要なのか。それは、キャリアを個別の問題として扱うのではなくカップルの問題としてとらえるほうが、はるかに良い結果をもたらすからだ。「共同の利益」を目指し、キャリアに関する決定を共同で行うほうが仕事もうまくいき、幸福感も増す。私の豊富な研究データがそれを示している。
とはいえ、デュアルキャリア・カップルは、引退までに「3つの大きな転換期」に直面する。最初の転換期は結婚後5〜6年で訪れる。引き金は2つ。まず、転勤など、仕事上の変化だ。選択次第では大きなチャンスになるが、話し合いはひと筋縄ではいかない。そして、2つ目の引き金は第1子の誕生だ。
最初の転換期で犯しがちなミスは、相手を転職させて自分の転勤先に連れていくなど、表面的な解決策に頼ることだ。これは夫婦の力関係と選択にかかわる問題であり、どちらが大きな力をもち、どちらが自分を抑えるのかを決めることだ。対処療法ではまずい。
相手の仕事を優先させる「1番手・2番手」の関係か。優先度を定期的に入れ替える「交代制」か。こうした重要な話し合いを重ねる夫婦は仕事もふたりの関係もうまくいく。
第2の転換期はキャリア中盤に訪れ、実に厄介な時期ともいえる。40代に入って自分のなかからわき起こる、「今のままでいいのか」「転職すべきか」といった疑念が引き金になる。キャリアや人生を見直す時期だ。
また、子どもが巣立っていない一方で親が年を取り介護が必要になるなど、二重の責任と重圧が生じる。つまり、「サンドイッチ」状態だ。離婚率が最も高い時期でもある。