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九州でいちばんマイナーな村、脱炭素農業で逆転を狙う

のら公式ホームページより

熊本県球磨郡山江村は、人口3000人あまりの自然豊かな山村だが、2023年10月のテレビ西日本の調査で、九州沖縄地方でもっともハッシュタグが少ない市町村第1位となった。つまり吸収で、というから実質全国でほとんど話題にならない、もっとも知られていない村ということだ。ご多分にもれず、ここも高齢化と過疎化に悩んでいる。このままでは村が潰れると、村の3人の若者と1匹の犬が新しい脱炭素農業ビジネスを立ち上げた。

中山間地である山江村は、農耕面積が村全体の4パーセントしかない。この村で採れる「やまえ栗」は、かつては昭和天皇に献上するほどの名産品だったが、現在は収穫量は最盛期の3分の1程度に減ってしまった。そんななかで、限られた農地を有効に使い、利益率の高い作物をネット販売しているのが「のら」という地元企業だ。

福岡県出身で東京消防庁に10年間勤務したあと山江村に移住し、栗農家として新規就農した柳川淳耶氏、山江村出身で大阪でホテルや人材派遣会社に勤務したあとUターンして新規就農した桐木隆史氏、そして東京生まれで山江村に育ち、飲食店や林業を10年間経験したあとに新規就農した松本聖司が2024年3月に創設した株式会社のらだ。

「のら」という名前には、野良仕事と野良犬から付けられた。共同創設者の3人は、野良犬のような「自由さと飢えという野性味」という価値観がピッタリ一致したのだという。同社のメンバーには「すず」ちゃんという犬も加わっている。

のらが販売するのは、唐辛子、キクラゲ、甘長トウガラシ、やまえ栗など。現在、個人向けのネット販売に加えて、県内外の飲食店や製菓店への直接卸し販売の販路も広げている。また、もみ殻や栗の剪定枝、イガなどの農業廃棄物を使ったバイオ炭の生産や、水田からのメタン発生を抑制する中干し期間の延長などにも取り組んでいる。こうした脱炭素化も「新たな付加価値」とした農作物を「のらしごと人」のブランドで売り込んでいく考えだ。

同社は5月に公式ウェブサイトを開設した。これを通じて生産や収穫などの活動を積極的に発信し、売り上げを伸ばし、山江村の雇用創出につなげたいと同社は話している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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