豪州からの訪日客が高水準の消費額
コロナ禍前は「爆買い」でインバウンド消費を牽引した中国からの旅行者の場合、今年1月~3月期の消費額は約3478億円。集計対象の国・地域で最も多い。同国からの訪日客の1人当たり旅行支出も29万3050円で2019年同期を約34パーセント上回るが、23年同期との比較では約57%減と大幅に減った。「爆買い」の一巡などが響いたとみられる。
足元は円安・人民元高が進行。それを考慮すれば、旅行客一人ひとりが無駄な消費を手控えている可能性も高い。
国・地域別で現在、最も多い韓国からの訪日客の1人当たり旅行支出は10万円あまりにとどまる。これに対し、アジアでは中国からの訪日客の1人当たり旅行支出が突出。SMBC信託銀行プレスティアの山口真弘・投資調査部長は「中国からの旅行者の支出を今後、どこまで引き上げることができるかがインバウンド消費全体の底上げのカギを握る」と指摘する。
だが、「中国国内のホテルが日本を手本にサービスのクオリティを高めており、両国間のホテルで旅行客の奪い合いが起き始めている」(中国の富裕層事情に詳しいコンサルタント)といった現象もあるという。
一方、豪州からの訪日客の今年1月~3月期の1人当たり旅行支出は37万円あまりと集計対象の国・地域で最も高い水準だ。「スキーリゾートでの長期滞在など、同国の旅行客需要にマッチしたサービスの提供が行われている証左だろう」などと前出の山口氏は推測する。
日本の株式相場では、東京ディズニーシーやディズニーランドを運営するオリエンタルランド、菓子大手の寿スピリッツ、帝国ホテルなどインバウンド関連の主力銘柄の一角が軟調に推移する。「1人当たり旅行支出の伸び悩みを嫌気しているのかもしれない」とベテランの市場ウォッチャーはつぶやく。多くの外国人旅行客の財布のヒモを緩めるためには、国・地域で異なるニーズをきめ細かに拾い上げるような仕組みづくりが欠かせない。