昨年のウランラッシュは、新規鉱山の開発が長期にわたり進捗せず、CO2を出さない電力源として原子力発電への関心が再び高まった結果、需要が供給を上回ったという単純なケースだった。
また、ウクライナ戦争に加え、米国で最近起こった3つの出来事が、ウランと核燃料サイクルへの関心を高めている。
原子力に再度注目が集まるきっかけになった最初の出来事は、先週、ジョージア・パワー社のボーグル原発4号機の稼働が始まったことである。それに続きワシントンでは、新世代の原子力発電所の建設を加速させる法律が超党派の政治家たちによって支持された。
かつて論争の的となった原発に対する注目は、ロシア産ウランの輸入を禁止する法案が米上院で可決されたことでより一層高まった。この禁止令が施行されると、2027年末までの猶予期間ののち、米国の電力各社は国内またはカナダやオーストラリアなど他の供給国からの燃料調達に移行することになる。
こうした米国での動きと時を同じくして、ロシアによる核兵器の演習実施の可能性が報じられ、ウクライナを支援する西側諸国に対して同国が短距離戦術核兵器を使用するかもしれないという脅威が重なった。
多くの観測筋は、ロシアが核兵器使用に訴えることはないと確信しているが、プーチンは、米国がロシア産ウランを禁止したことに不快感を示し、先制的に独自の禁止措置を講じた。
投資銀行のレポートによれば、ロシアのウラン輸出が早期に停止されれば、供給が大幅に不足し、ウラン価格が現在の1ポンドあたり92ドルから150ドル以上に上昇する可能性があるという。
モルガン・スタンレーは先週、プーチンが核兵器の演習を予定していると報じられる前に発表していた顧客向けメモで、米国の輸出禁止措置はウラン価格にとってプラスに働く一方、ロシアへの報復的な輸出禁止措置のリスクは「予想より早く市場を引き締めるだろう」と述べた。ロシアが独自に米国へのウラン出荷を禁止する可能性は、ウクライナの最新動向により高まっている。
ウラン価格に追い風
シティグループは、前年同期の1ポンドあたり53ドルから、1ポンドあたり92.40ドルへと74%上昇し、ここ2週間でも7%上昇したウラン価格にとって、米国の禁止令は確実に追い風になると述べた。この禁止令がどれほど早く発効されるかは、今後のウラン価格に大きな影響を与えることになる。
シティグループは「ロシアによる報復と(ロシア自身による)輸出禁止の可能性は、ウラン価格に不安定さをもたらすことになる。それを踏まえた私たちの楽観シナリオでは、今年の平均価格は1ポンドあたり121ドル、2025年には同151ドルになると見ている」と述べている。
来年のウラン価格がシティの目標価格である151ドルに達すると仮定すれば、2007年に記録した140ドルの史上最高値を更新することになる。
(forbes.com原文)