サイエンス

2024.07.07 14:00

実験が示す海洋生物が「化石化」するメカニズム

Getty Images

多くの化石の保存において、「埋まってしまう」ことは清掃動物を避け、硬組織の分解や軟組織の腐敗を防ぐきわめて重要な要素だ。

対象物が急速に埋められることにより、非常に保存状態の良い化石になることはよくあるが、このプロセスにどのような堆積が関係しているのかに対する研究は進んでいない。

新たな研究で著者らは、クモヒトデを用いて、さまざまな流れの速い土石流における埋没のシミュレーションを行った。

タービダイト(混濁流による堆積物)とテンペスタイト(暴風による堆積物)は、海洋環境における生物、特に小型の脊椎動物の主要な埋没の要因と考えられている。クモヒトデは海底に生息するありふれた生物であり、4億1000万年以上前の化石記録で知られている。

急速な埋没をシミュレーションするために、著者らは生きたクモヒトデのいる水槽につながる斜面に沿って、泥、粘土および泥質砂の入ったバケツを空けた。すべての被験体は堆積した薄い(1cm)砂の層の下に逃げ込んだ。

クモヒトデは5本の腕の1つを使って中央の盤(胴体)と残りの腕を同じ軌跡に沿って引きずる。体を覆う層が厚くなるにつれ逃げるのに時間がかかるようになり、目の粗い砂粒の中をくねくねと進みながら最終的に腕の先を1本か2本失ってしまう。埋没した完全な被験体が見つかったのは、厚さ10cmの砂の層の中だった。ほとんどの被験体がこの過程で極度に疲弊していた。深い堆積層における酸素不足が原因の1つだった。

研究結果は、地層の厚さが急速な埋没と化石の保存における主要な要因であることを示している。泥あるいは粘土の層がより小さな生命体をすばやく覆って窒息させるという理由から、それらが動物化石の例外的な保存状態に関与しているとしばしば見られてきた。しかし本実験では、被験体のクモヒトデのほとんどが、低い酸素濃度の中でも逃げ出すのに十分な時間、活動していたことから、その説が必ずしも当てはまらないことを示した。著者らは、粒子のサイズではなく、泥層に関わる別の要因が動物を捕捉する上で役割を果たしていることを示唆している。淡水の流入はクモヒトデのような海生動物を一時的に「気絶」させ、脱出を阻止するという。

論文「How does rapid burial work? New insights from experiments with echinoderms"」は学術雑誌のPalaeontologyに掲載されており、オンラインで読むことができる。

追加資料はPalaeontological Associationから提供された。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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