Bリーグ・下位常連の三遠を地区優勝に導いた、ハーバード大との連携「データ活用術」とは

SAN-EN NEOPHOENIX #5 大浦颯太選手

SAN-EN NEOPHOENIX #5 大浦颯太選手

バスケットボール男子・Bリーグの年間王者を決める、日本生命チャンピオンシップ(CS)がいよいよ10日開幕します。
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今季は最終節(第36節)まで地区順位・CS進出クラブ決定がもつれ込む混戦のシーズンでしたが、中地区ではBリーグ発足2シーズン目(2017-18)以降、下位に低迷し続けてきた「三遠ネオフェニックス」が早くから首位を独走し、第31節・4月10日に初の地区優勝を果たしました。

この快挙の裏には、2011年にブラッド・ピット主演で映画化された『マネーボール』*さながらのデータ分析を活用したクラブの大改革がありました。

昨シーズンに三遠に加入し、ビデオアナリストとしてデータ活用を推進してきた木村和希氏が、早くも大きな成果をあげたプロジェクトの取組みとCSへの挑戦について、お届けします。
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* MLBオークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンが統計の専門家を雇い、当時MLBでも主流ではなかったセイバーメトリクスと呼ばれる統計学的手法を用いて、チームを万年下位から脱却させプレーオフ常連の強豪に立て直す様を描いた、マイケル・ルイス著のベストセラーノンフィクション
B.LEAGUE 2023-24シーズン B1中地区優勝を果たした三遠ネオフェニックス

B.LEAGUE 2023-24シーズン B1中地区優勝を果たした三遠ネオフェニックス


クラブ再建の柱に。ハーバード大学とデータ分析プロジェクトを発足

愛知県の東三河地域と静岡県遠州地域をホームエリアとする我々「三遠ネオフェニックス」は、Bリーグ初年度の2016-17シーズンこそCSに進出するも、その後はリーグ下位に沈み続けていました。

【三遠ネオフェニックス 過去の成績】

2016-17:B1中地区 2位(6クラブ中)
2017-18:B1中地区 4位(6クラブ中)
2018-19:B1中地区 5位(6クラブ中)
2019-20:B1中地区 6位(最下位)
2020-21:B1西地区 9位(10クラブ中)
2021-22:B1西地区 11位(最下位)
2022-23:B1中地区 6位(8クラブ中)
2023-24:B1中地区 1位(8クラブ中)


そんなクラブ再建のため、三遠は2022年に大胆な体制変革を実施。現場のトップであるヘッドコーチ(HC)に、千葉ジェッツふなばしを天皇杯3連覇や初のBリーグ制覇に導いた大野篤史氏を迎え、それに伴って、大野HCと共に5年間ビデオアナリストとして仕事をしてきた私も三遠に移籍することになりました。

私が移籍を決断した最大の理由は大野HCと一緒に働きたいとの思いでしたが、三遠が目指す「世界のSAN-ENへ」や「100年さきの笑顔のために」といったビジョンや理念に魅かれたのも動機の一つです。

そうした三遠のビジョンを達成するために、実績あるスタッフを迎え入れ、チームを強化していくマネジメントを任されたのが、国際部門バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー(GM)に就任した、秦 アンディ 英之氏でした。

そして、国際的なスポーツビジネス経験を持つ秦氏がいち早く手をつけたのが、アナリティクス分野の活用と海外との連携プロジェクトの発足でした。

2022年7月にハーバード大学とのアナリティクスパートナーシップ提携を発表し、同大学経済学部教授のJudd Cramer(ジャッド・クレイマー)氏と三遠のアナリストチーム共同で、チーム強化を目的としたデータ分析プロジェクトを始めました。
三遠ネオフェニックスとハーバード大学のアナリティクスパートナーシップ提携プロジェクト

プロジェクトではまず、データ分析をハーバード大学側ではJudd氏リードのもと学生の力を借りながら、そして三遠側では2名のアナリストが行ない、双方の分析結果を持ち寄って隔週のミーティングで議論して、チームの課題や改善策をまとめたレポートを作成。それをコーチや選手、GMにプレゼンし、戦略の立案・共有・評価検証・改善等の判断やチームの編成といったチーム強化に活用するという流れで運営しています。

また、選手自らが提示された課題について考え、発言する時間も作っています。プロジェクトメンバーとコーチ・選手がそれぞれの立場から意見を出し合って、戦略課題の発見や解決に取り組んでいるのです。
三遠ネオフェニックスとハーバード大学のアナリティクスパートナーシップ提携によるデータ分析プロジェクト

次ページ > ハーバード大教授が植え付けたプロジェクトの哲学と2つのフレームワークとは

文=木村和希 画像=SAN-EN NEOPHOENIX 編集=宇藤智子

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