「【ご報告】本日2024年2月1日に山田進太郎D&I財団のCOOに就任しました」
リモートアシスタントサービス運営のキャスターで取締役CRO(チーフ・リモートワーク・オフィサー)を務めた石倉秀明は、スタートアップの世界からソーシャルセクターへと異色の転身を果たした。「Mr. リモートワーク」と呼ばれ、日本の働き方改革を代表するパイオニアのひとりである石倉の新たな挑戦は界隈で話題となり、このXの投稿は30万以上のインプレッション数を記録した。
なぜ、非営利団体でD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進を目指すのか。きっかけは、石倉が前職で感じた日本のジェンダーギャップの深刻さだった。
「キャスターでは、リモートワークの求人に対して、毎月数千人の応募があります。ただ、その9割は女性によるもの。育児や夫の転勤などの事情でキャリアを諦めざるをえない方がたくさんいて、この性別によるギャップを生んでしまっている構造を何とかしなければと思いました」
23年、キャスターは東証グロース市場に上場し、自身も40歳というひとつの節目を迎えた。新たな挑戦の舞台をどう定めるか。もともと石倉は、取締役の退任後、自らD&Iを推進する事業を立ち上げるつもりでいたが、あるときメルカリ創業者の山田進太郎が設立した公益財団法人、山田進太郎D&I財団の求人を見つけて、次の考えに至る。
スタートアップをはじめとする営利企業は、課題解決を志向する一方で、お金を稼ぐことが優先される。当然、利益の望めない事業は、時に撤退する判断も求められる。しかし、非営利団体であれば、それを気にせず長い時間軸で課題解決に取り組めるのではないか──。このパラダイムシフトは、石倉が意思決定するに足る要因となった。「非営利は収入が低い」というイメージを払拭し、実績のある人材が高待遇で参画して社会に対してインパクトを生み出す。
ソーシャルセクターの新しいキャリア像を提示する意味でも、この転身に魅力を感じたと石倉は話す。「誰も選ばなそうなことをするほうが、僕は面白そうだと思ってしまうんです」
社会課題に対する強い当事者意識をもち、その解決に取り組む姿勢が目立つ石倉。しかし、以外にも本人によると、それは外から見た印象でしかないという。「課題を元に次の職場を選んだのはこれが初めてですよ。そんな考え方はしてこなかった。むしろ、僕は年収をしっかり稼げるサラリーマンになりたかっただけ。志はめちゃくちゃ低いんです」