注目度が増す雇用統計
注目されているのはインフレ指標だけではない。FRBのジェローム・パウエル議長は、インフレが緩和するにつれて雇用統計の重要性が増すと指摘している。パウエル議長は米国時間5月1日の記者会見で「インフレ率が低下し、過去12カ月ベースで3%を下回っている。【略】現在、私たちはインフレ指標以外の目標達成についても注力しており、雇用統計に関する目標の達成に注力するようになった」と述べた。この発言は、雇用統計が大幅に弱まることが予想される場合、たとえインフレ率が低下したとしても、FRBは利下げに踏み切る可能性があることを示唆している。このような利下げが実施されるとすれば、FOMCの完全雇用目標を達成するためであろう。
4月の雇用統計は多くの予想より軟調だった。雇用市場に利下げを促すほどの懸念があるかどうかはまだわからない。雇用の冷え込みは、賃金上昇圧力を緩和し、それによりディスインフが進行する可能性もある。
アトランタ連銀の『賃金成長率トラッカー(Wage Growth Tracker)』によると、2024年3月の賃金成長率は年率4.7%となっている。賃金の伸びは低下しているように見えるが、歴史的に見ればかなり高い水準にある。
米国金利の行方
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のFedWatch Toolによれば、2024年の金利は低下すると予想されている。6月に利下げが実施される可能性はわずか10%だが、7月には30%に上昇し、9月には利下げが実施される可能性が高いとの予測だ。市場は2024年に利下げが行われない可能性も10%織り込んでいるが、全体として、FOMCは12月までに1回から3回の利下げを行う可能性が高いと予想している。
6月12日に開催されるFOMCでは、FOMC政策担当者が年末金利の予測を更新する。これによってさらなる洞察が得られるだろう。3月20日に発表されたFOMC経済見通しによると、ほとんどのFOMC政策決定者は2024年に2回または3回の利下げを予想している。しかし、3月のFOMC以降、インフレデータはやや懸念材料となっており、最近の雇用統計はさらに雲行きを怪しくしている。
現在のところ、FOMCが次回6月12日の会合で金利を調整する可能性は低い。この会合では、FRBが2024年の利下げをどのように考えているかという重要な最新情報が提供される。しかし、現時点では、雇用やインフレに関する経済データの方がFOMCの声明よりも重要となってきている。
(forbes.com原文)