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2024.05.07 18:00

人気高まる「合成ダイヤモンド」、急激な価格下落による懸念も

パンドラの堅調な業績にもかかわらず、ラボグロウンダイヤモンドをめぐる懸念も見えてきている。特にその急激な価格の下落は、収益性を悪化させるおそれがある。

ダイヤモンド業界の著名なアナリストであるエダン・ゴランによると、ラボグロウンダイヤモンドによる収益は、販売個数が増えているのに縮小し続けているという。今年3月、ラボグロウンダイヤモンドのルース(裸石)の小売売上高は前年比5.6%減、平均単価は20%下落した。「ラボグロウンダイヤモンド分野はこれから進むべき道を見出す必要がある」とゴランは書いている。「消費者の需要は十分ではない」【略】「収入が減れば、収益性の悪化に苦しむ販売業者は顧客を他の製品に向けようとするだろう」

天然ダイヤモンド市場は危機を乗り越えるだろうか。不確実性があるにもかかわらず、専門家は天然ダイヤモンドの未来にまったく希望がないとは見ておらず、より安価な人工の同等品に脅かされるとも考えていない。「そもそも、ダイヤモンドの魅力の1つは、それに高い価値があることだ」とゴランは説明する。「変わらない価値」を大事にするため、ダイヤモンドの「ファストフード版」を追い求めようとはしない人もいるとゴランはいう。シグネット社のジーナ・ドロソスCEOもまた、直近の決算発表で、「天然ダイヤモンドの中にはとても希少で独特なものがある」ことから、同社がこの業界に「潜在的な追い風」を期待していると発言した。

 天然ダイヤモンドは地下マントル内で非常に高い圧力と熱のもとに数百万年もかけて生成されるが、ラボグロウンダイヤモンドは人工的な環境でこのプロセスを模倣して製造される。炭素原子を高温・高圧にさらして結晶化させるのだが、その期間は数週間から数カ月ほどであり、科学的には天然ダイヤモンドと区別がつかない。

しかし今年4月、ある科学者のグループが、液体金属とガスを用いて、より低い温度と1気圧の圧力で、ラボグロウンダイヤモンドをわずか数時間で生成させる新たな方法を発見したと、科学学術誌『Nature(ネイチャー)』に発表した。この発見がラボグロウンダイヤモンドの状況に革命を起こせるかどうかはまだわからない。このプロジェクトを主導した蔚山科学技術院のロドニー・ルオフ教授は、ビジネス誌『Fortune(フォーチュン)』に寄せたメールで、「スケーラビリティとコストの点については、時間が経てば明らかになるだろう」と述べている。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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