大きさにもよるが、ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドより70〜80%、さらに場合によっては90%も安くなると、ダイヤモンドディーラーで個人宝石商のダン・モランは語っている。この1年間、ラボグロウンダイヤモンドに対する旺盛な需要のおかげで、モランが販売した個数は30〜50%も増えたという。
ラボグロウンダイヤモンドは1950年代に工業用として作られるようになった。その後、新たな製造技術の改良が宝石品質のダイヤモンドの製造をより容易にしたことによって、1980年代に宝飾品市場で商業的に利用されるようになった。2018年には米連邦取引委員会が定義を変更し、ラボグロウンダイヤモンドを本物のダイヤモンドであると公式に認定したことで、より広く受け入れられ、供給されるようになった。当初は人工的な技術に反対していたデビアスのように伝統ある業界大手もこの流れに乗り、2018年にラボグロウンダイヤモンドを使った自社ブランドを発表している。
ラボグロウンダイヤモンドは数十年前から存在しているが、最近の急激な人気の高まりによって問題も浮かび上がった。近年の供給増加はラボグロウンダイヤモンドの小売価格を下げ、その手に入れやすい価格が購入者を魅了している。
「5年から7年ほど前まで、ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドよりわずかに安い程度だった。そのため、これに本気で夢中になる人はいなかった」とジムニスキーはいう。「しかし、価格が下がるにつれて、天然ダイヤとの相対的な価格差が広がったことにより、需要は明らかに増えている」
ジムニスキーによると、1カラットのラボグロウンダイヤモンドと天然ダイヤモンドの価格差は、2016年には10%だったが、2022年には80%にまで広がったという。加えて、ラボグロウンダイヤモンドにはもう1つ、購入者を魅了する特徴がある。それは、最近ではジムニスキーのように経験豊富なダイヤモンドディーラーでさえ「肉眼では視覚的に見分けがつかない」ようになっているということだ。
ラボグロウンダイヤモンドの流行は、その伝統的な競合が沈滞に直面していた時に到来した。天然ダイヤモンド業界は、コロナ禍によって外出が制限された期間に消費者が高級品への支出を増やしたために繁盛したが、コロナ禍の制限が緩和され、人々が日常生活を取り戻すと需要は衰え、供給業者は過剰な在庫を抱えることになった。
シグネット社のCEOは直近の決算発表で、消費者がこの2年間、インフレ高騰の影響を受け続けていることへの懸念を口にした。終わりの見えない需要の停滞に供給過剰が相まって、デビアスのような大手採鉱企業は、販売を回復させるために、過去最大級の大幅な値下げを余儀なくされた。それに加えて、ラボグロウンダイヤモンドが有望な代替品として台頭し、さらにその価格が下がったことが、消費者を天然ダイヤモンドから遠ざけてしまった。