アジア

2024.05.08 08:00

苦境の中国、融資の減少に表れる経済問題の深刻さ

先行き不透明な状況で金融機関は潜在的な融資先の財政が健全かどうかを少なからず警戒している。こうした不信感は金融機関間の取引や通常の業務での慎重な姿勢にもつながっている。米国でも似たようなことが起こった。2008〜2009年の金融危機のときだ。つまり、当時の米国と同様、現在の中国では経済成長を支える金融市場の力が弱い。

PBOCの金利引き下げも解決策となっていない。過去1年ほどの間にPBOCは5回の利下げを行った。だがいずれも小幅だった。例えば、主要指標の1つであるローンプライムレートは、わずか0.4ポイントしか引き下げられていない。同時期に中国は年2%前後の緩やかなインフレからデフレに転じていることを考えると、PBOCの利下げでは利下げ政策を開始した時よりも金融市場の金利は実質上昇したことになる。これは借り入れにつながらず、実際、借り入れを阻む要因となっている。政府の金融政策が経済活動の活発化につながらないのも無理はない。

PBOCが状況に応じて大胆な措置を取るとしても、政府は不動産危機に直接対応する必要がある。2021年に問題が発生した時点ですぐさま対応すべきだった。昨年まで行動を起こさなかったため、その間に金融市場は前述した通り弱体化した。問題発生後、例えば販売済みの未完成アパートの建設を政府がバックアップすると発表するなど、何らかの対応をただちにとっていれば、不動産企業の破綻が金融に及ぼす悪影響を完全にとまではいかなくてもある程度抑制することはできただろう。

だが、政府は何の対応もしなかった。昨年末になって、当局が未完成のアパートやその他の微妙な開発物件への支援を打ち出したが、充てた予算はあまりにも少なかった。その額は恒大集団の最初の損失の5%をかろうじて上回るほどで、恒大集団に続いて経営難に陥った不動産会社の負債額にもはるか及ばない。これだけを見ても、中国はまだしばらく苦境から抜け出せなさそうだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事