ホワイトハウスはその大半をATACMSの緊急供与に充てた。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、供与数は100発超にのぼったもようだ。さらに、議会で新たな支援法案が可決された翌日、ホワイトハウスがウクライナに急送した10億ドル(約1530億円)相当の兵器にもATACMSが含まれていた可能性がある。
ロイド・オースティン米国防長官は先週、議会の公聴会で、国防総省はウクライナにATACMSを「できる限り多く」譲渡すると証言している。米国の兵器庫にはATACMSが数千発ある。多くはロケット燃料の劣化にともない使用期限が迫っているため、米国は急いで手放そうとするかもしれない。
ロシアはウクライナに新たなATACMSが届くことを知っていた。そのうえ、ウクライナ軍がそれをロシア軍の最も脆弱な集中地点(訓練場を含む)に向けて発射するだろうという警告も十分あった。実際、ウクライナ軍は2月の恐怖の1週間に、今回のATACMSより短い射程のミサイルを少なくとも3回、訓練や上官による閲兵のために野外に集合していた大勢のロシア兵らに向けて撃ち込み、伝えられるところでは100人以上を殺害していた。
ウクライナ軍は昨年秋、ATACMSを初めて少数入手すると、さっそくロシア軍の飛行場2カ所に向けて発射し、ヘリコプター約20機を破壊したり損傷させたりした。また、おそらく先月上旬、ATACMSの新たな供与分の第一弾が届くと、これもあまり間をおかずロシア空軍の貴重なS-400地対空ミサイルシステムへの攻撃に用い、発射機少なくとも4基を破壊した。
ロシア占領下クリミアのS-400に対するこの攻撃は、ロシア側にはATACMSを確実に迎撃できる防空兵器がないこともあらためて示した。その含意は明らかだった。4月時点で、ロシア軍部隊が前線から300km以内で露出した状態になれば、ウクライナ軍が在庫を増やしているATACMSによる攻撃を受けやすくなっていたということだ。
その危険を顧みず、ロシア軍はクバニ付近の野外に多数の兵士らを集めた。案の定、そこにATACMSの一撃が加えられ、100人以上が死亡する結果になったようだ。
(forbes.com 原文)