経営・戦略

2024.05.09 10:00

今、日本企業の「取締役会」に求められるリーダーシップ 注力すべき3つの役割

ここ数年で多様になったとはいえ、日本の取締役会は世界と比べて依然として似たような人間の集まりだ。日本は取締役会の議長を兼務するCEOの割合がどの地域より高く、独立社外取締役の割合は最も低い。また、日本の取締役の平均年齢は最も高く、日本人男性であることが多い。

取締役の重要な3つの役割

長期戦略に焦点を当てた、多様でオープンそして忌憚なく発言する取締役会にすることで、取締役は会社が必要とする3つの役割を果たすようになる。

・潜在能力を網羅した野心的な目標を明確に

歴史的に日本のコーポレートガバナンスは、おそらく企業価値の持続的な成長よりリスク管理に重きが置かれてきた。「取締役会は長期的なビジョンや使命の議論に十分な時間を割いていない」とあるCEOは指摘。「本来は経営陣が議論すべき、短期的な 『何をするか』と『どのように行うか』 を議論することに多くの時間を費やしている」とも語った。取締役は自社の野心的な目標は何なのかに焦点を絞るべきだ。別のCEOは「取締役が変えなければ、取締役でいられなくなる」と話した。

・価値創造のための具体的な計画を

次のステップは、大きな可能性を秘めた戦略を、価値を創造するための具体的な計画に落とし込み、計画実行を監視することだ。そうすることで、取締役会の議論が本来の軌道に乗り、価値の創造に専念できるようになる。「取締役会は会社のコアコンピタンス(核となる強み)について包括的な議論を行う必要がある」とある独立社外取締役は指摘した。「そうした流れでなければ、社外取締役が良い助言をするのは非常に難しい」という。

・説得力のあるエクイティストーリーを

戦略を株主が期待できるリターン、特に総資産利益率(ROA)や自己資本利益率(EOE)につなげられるかは取締役会次第だ。ある社外取締役は「取締役会の重要な役割は、企業の使命やビジョン、戦略について往々にして語られることのない事を投資家や関係者が理解し納得できる言葉にすることだ」と説明した。

課題は多いものの、日本にはいくつか強みがある。日本で長らくみられる「三方よし」の経営哲学は顧客、従業員、そして社会の重要性を認識しており、投資家に限らず幅広い関係者を大切にしてきた。これは、多くの米国企業がいま受け入れていることだ。また、日本は昔から長期的に物事をとらえる。過去には、社会とともに成長するという使命の一環として、150年戦略を発表した企業もあった。

激動する世界で、企業はこれまでより速いペースで多くの混乱に直面している。どこの国の企業であれ、取締役会のリーダーたちは荒波を乗り超えてさらに会社を強くできるよう、支える責任がある。今こそ行動を起こす時だ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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