おもしろいことに、水原氏、アイアトン氏両名の「通訳の流儀」には大きな違いがあるという──。大谷翔平「新通訳アイアトン」、水原一平と訳し方の差くっきり。実例で分析に続いて以下、国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld代表取締役の松樹悠太朗氏が、水原氏の流儀を分析した後に、「2つの流儀」は、対話に実際にどう影響するかを考察する。
水原訳は「主張と本論の順番を入れ替える」
大谷翔平「新通訳アイアトン」、訳し方が水原一平と段違い。実例で分析したでは主にアイアトン氏の通訳の流儀について紹介した。
本稿では、過去の水原氏の通訳例も見ながら、2人の「流儀」を比較してみたい。
水原氏は「意訳スタイル」であると言われている。アイアトン氏と比較すると大きく違う点の一つは、水原氏は英語の作法に合わせて主張と本論の順番を入れ替える点である。次に違う点は、水原氏は話の要点を捉えつつ、必要であれば単語を入れ替え、時には肉付けし、不要であれば割愛するなど、その都度日本語と英語の行間の調整を瞬時に行いながら通訳を行っていくことである。
彼のこのスタイルが顕著に表れているのが次の3つの通訳例である。まずは英語のコミュニケーションの作法に合わせた通訳のスキルを見ていく。アイアトン氏の通訳とは違い、1.の本論と2.の主張が入れ替えられていることが分かる(本稿でも記事末に、同じ内容を表形式でも掲載した)。