実は、2人の「通訳の流儀」には大きな違いがあるという──。以下、国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld代表取締役の松樹悠太朗氏が、以下、まずはアイアトン氏の流儀を実際の通訳例を用いて分析する。
「水原一平氏の訳し方分析」はこちら> 大谷翔平新通訳、水原一平とは全然別の訳し方。違いは「行間」
アイアトン訳、ネイティブには「1個1個がつながっていない」印象?
大谷翔平氏の通訳者が水原一平氏からウィル・アイアトン氏に変わってから、二人の通訳のスタイルの違いがテレビやオンライン記事で話題となっている。専門的な視点や感覚的な違いに至るまで幅広く議論が展開される中、国際的なコミュニケーションのコンサルティングを専門にしている筆者にとって、特に印象に残ったコメントがあった。
一つ目は、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏のコメントである。「アイアトン氏の通訳は(水原氏と比べると)英訳がすごく適切で的確で、すごくスムーズ。水原氏の通訳を何度か見たことがあるんですが、(水原氏より)倍くらい丁寧ですね。」というものだ。
もう一つはハーバード大大学院終了の経歴を持つタレント・REINAさんの次のコメントである。「(アイアトン氏は)本当に言ってることをそのまま通訳されている。気を付けて言葉選びをされていた。だからこそ、正直、アメリカ人として聞いていると、ぎこちなさというか、1個1個がつながってなかったり、ちょっとそういう印象は(あった)」。
これらのコメントはアイアトン氏の通訳のレベルの高さを評価していることには間違いない。しかしだ。丁寧に大谷選手の通訳を行っているのに英語のネイティブスピーカーには「1個1個がつながっていない」ようなぎこちない印象を与えたということなのである。
筆者自身、実際に国際ビジネスの現場ではこのコメントの通りのこと(つながらない)を常に感じ、その修正を行わない時はない。そしてこのような違和感を生じさせている原因の一つが、実は日本語と英語の間で生じる「空気を読む・読まない」というコミュニケーションスタイルの違いなのである。