直接的な原因は、1930年に成立した米関税法(スムート・ホーリー法)の非課税基準を定めているデミニミス・ルール、具体的にいうと中国発のTemu(ティームー)やSHEIN(シーイン)のような企業による同規定の悪用だ。この規定は800ドル(約12万6000円)未満の小包の関税を免除するもので、前述の2社のような国外のD2C小売企業は関税を免れ、米国メーカーの競争力を削ぐことができる。
こうした状況は米議会の目に留まっている。中国共産党特別委員会の調査によると、デミニミス・ルールの下、米国に毎日出荷される小包の30%以上がティームーとシーインのものである可能性があり、それら小包のほぼ半分は中国から送られているという。
デミニミス・ルール下で輸入される小包の数は2016〜2021年に3倍以上に増えた。中国企業の商品には関税がかからず、一方でGap(ギャップ)やヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)のようなファッション小売大手は年間数億ドルを支払っており、大きな足かせとなっている。
だが米国におけるアパレル生産の空洞化は今に始まったことではない。カジュアルビジネス服を国内で生産するAuthentically American(オーセンティカリー・アメリカン)の創業者でCEOのディーン・ウェグナーは、このところの廃業ラッシュの前から、米国で着用される衣服で国産のものはわずか3%だとたびたび指摘していた。
1990年代以降に米国でアパレル生産が大幅に落ち込んだ原因について、業界関係者は2点挙げている。1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)と2000年の中国との貿易関係正常化だ。データがそれを裏付けている。アパレルと皮革製品の生産は1990年代後半から減少し始め、2000年代前半には減少が加速した。
議論の中でほとんど語られていないのは、米国の生産者に大打撃を与えた数々の規制だ。規制は1970年代初めに設けられ始め、そこから増えた。バイデン政権はこのような規制作りを大