長年にわたる業界の衰退と最近の一連の廃業が相まって、多くの業界トップらが保護措置を求めている。現在、連邦議会ではデミニミス・ルールの変更が議論されている。持続可能性に配慮したTシャツやニット帽を生産し、Bコーポレーションに認定されているノースカロライナ州のTS Designs(TSデザインズ)のエリック・ヘンリー社長は、「超党派の支持を得るのは難しいことだが、この件に関しては支持を得られると期待している」と語った。貿易障壁という幅広いテーマについて、ヘンリーは「資本主義体制を絶対的に支持しているが、政府による保護措置が必要だ。車の運転と同じように、道路にもルールが必要だ。措置の検討に5年もかけるわけにはいかない」とも述べた。
だが、米国の生産者は低品質の物を大量生産する中国の競争相手とは差別化を図る必要があるとの指摘もある。「品質は持続可能性の問題だ」とビルストロームは話す。「高い品質によって持続可能性を大幅に改善できるとよく耳にする。消費者は安い服について学んできた。だが、安い服では快適に着用できるようにサイズが豊富に用意されているわけではなく、生産者は作るべきものを明確に把握していないため、そうした服の30%は売れずに埋め立て処分されてしまう」
高品質でニッチなブティックアパレルは、差別化というアプローチに明らかに適している。アパレルメーカーのVermont Flannel(バーモント・フランネル)と国産品だけを販売するAll American Clothing(オール・アメリカン・クロージング)の戦略的な業務提携を支援したUSA Brands(USAブランズ)のCEO、ジョー・ヴァン・デマンはブランドが事業を拡大する機会を指摘した。「当社では、バーモント・フランネルのようなブランドを、どうすればバーモント州から全米展開できるかを検討した」「その結果同社はこの1年で20%以上の成長を遂げた」と説明した。
フィラデルフィアに本社を置くスポーツウェアと高級アウターウェアのメーカー、Boathouse Sports(ボートハウス・スポーツ)のCEO兼社長であるシンディ・ディピエトラントニオは「規制は海外の企業に競争上の優位性を与えている」「ボートハウスで大切にしているのは品質。人生で最も輝いていた時期にボートハウスの服を着ていた人たちは、もう一度ボートハウスを着たがっている。そのため、小売の反応は上々だ」と述べた。
だが、ヴァン・デマンは実用的な服にもチャンスを見出している。「実用的な服に注力できると思う」と指摘する。「価格65ドルのブルージーンズを生産できる。低価格のものとは競合しないが、高い品質が競争力を生む。当社が13ドルで販売するTシャツはウォルマートの商品と競えないが、それでも買い手を引きつける」
結局のところ、カギを握るのは商品を購入する人々だ。「単純な話で、注文が必要だ」とビルストロームはいう。「強気にとらえている。なんとかできることを証明してきたが、購入してくれる人がもっと必要だ」
廃業が最近相次ぎ、アパレル生産を国内回帰させるための手っ取り早く簡単な解決策がないからといって、誰もが絶望しているわけではない。「楽観できる理由はたくさんあると思う」とディピエトラントニオはいう。「新型コロナから私たちが学んだことがあるとすれば、それは柔軟性が必要ということだ。国内での生産がなければ、その柔軟性はない」と指摘した。
(forbes.com 原文)