こうした需要増の要因としては、電気自動車(EV)の生産、エネルギーシフト、新興国でのインフラ建設が考えられるという。新興国の中でも、今後インドが与える影響は特に大きくなるとのことだ(現状では、インドの人口1人あたりの銅使用量は、中国と比べてわずか20分の1)。一方、記事中で触れられてはいるが、それほど重要とはされていないのが人工知能(AI)の成長が銅の需要を牽引する可能性だ。
サプライチェーン戦略の立案者にとっては、都市鉱山(すなわちリサイクル)に基づいて銅を採掘する、クローズドループの(循環利用を行う)アプローチを検討する時期に来ているのかもしれない。
銅供給が危機的状況に陥る可能性は
銅価格は上昇を続けているが、インフレ調整後の基準では、2011年や1966年にみられたピークと比べて、いまだに低い水準にある。ではなぜ、不安に思う必要があるのだろうか?理由の1つは、サプライチェーンの状況にある。銅が重要度を増している素材であるという視点から見ると、現在の価格は、今後10年間に生じるであろうリスクを、実際より低く見積もっていることが示唆されるのだ。
注視すべき3つの要素を以下に挙げよう。
・インド
インドにおける製造業の規模拡大は、Cisco(シスコ)やAdidas(アディダス)、Gap(ギャップ)、Siemens(シーメンス)といった企業からの大規模投資を引き寄せている。インド政府はこれを好機ととらえ、国内の物流インフラ刷新が必須の課題だと見ている(現在の物流インフラは、世界ランキング38位にとどまっている)。加えて、電力産業における炭素強度の削減も、政府が重視する課題だ。インドにおけるキロワット時あたりの二酸化炭素排出量は現在、米国さらには製造業の集約地としてライバルとなっているベトナムと比べても、2倍近くに達している。
さらに、インドにおける銅の需要は、商品トレーダーの予想より早い時期に急増する可能性がある。つまり、リスクを嫌うグローバルブランド各社が、インドの首脳に働きかけて、1990年代の中国が行ったように、インフラ投資を政府が主導する迅速化施策と組み合わせることが実現すると、銅の需要が急増する可能性がある。