宇宙

2024.05.02 18:00

インドでわずか約6900年前にできた「天体衝突クレーター」発見

インド北西部カッチ地方にあるルナ衝突クレーター。2024年2月24日に地球観測衛星ランドサット8号が撮影(Michala Garrison/NASA Earth Observatory/USGS)

インド北西部のカッチ地方にある円形の凹地は長年、科学者の興味を引きつけている。隕石衝突クレーターの残骸が風化を受けたものと推測されていたこの凹地は、周囲の岩石に天体衝突の変成作用で形成される特徴的な鉱物が含まれていることが、最新の地球化学的分析によって明らかになったと、米航空宇宙局(NASA)のウェブサイトEarth Observatoryに掲載されているリンジー・ドーマンブログ記事に記されている。

近くにある村の名前にちなんで命名されたこの「ルナ構造体」は、直径約1.8kmで、外縁部は周囲の草原より6mほど高くなっている。最も深い地点には、一時的に塩水湖ができている。研究チームは2022年5月の乾期を利用して、構造体全域からサンプルを収集した。

サンプルの岩石や堆積物から、地球の自然環境ではめったに見られない鉱物をいくつか検出した。これらの希少鉱物は、隕石が地面に衝突する際に生じる超高温高圧下で形成される。さらに研究チームは、異常に高いイリジウムの濃度を測定した。金属元素イリジウムは、地球の外側の岩石層にはほとんど存在しない一方、鉄隕石に広く含有されている。

塩水湖の湖底堆積物に含まれる植物の残骸の放射性炭素年代測定に基づき、この隕石衝突が約6900年前に起きたことを、研究チームは突き止めた。これはこの規模のクレーターとしては驚くほど若い形成年代だ。2021年に発表された研究では、中国北東部にある直径1.85kmの依蘭クレーターが、約4万7000~5万3000年前に形成されたもので、地球上で最も年代が新しい大型隕石衝突として特定されていた。米アリゾナ州にある有名なバリンジャー隕石孔は直径1.2kmで、約4万9000~5万年前に形成された。

今回のルナクレーターは、古代インダス文明のハラッパー都市遺跡の近くにあるが、隕石衝突が人類の到着より以前に起きたかどうかについては不明だ。

インド北西部カッチ地方にあるルナ衝突クレーター周辺の拡大画像(右下枠内)。2024年2月24日に地球観測衛星ランドサット8号が撮影(Michala Garrison/NASA Earth Observatory/USGS)

インド北西部カッチ地方にあるルナ衝突クレーター周辺の拡大画像(右下枠内)。2024年2月24日に地球観測衛星ランドサット8号が撮影(Michala Garrison/NASA Earth Observatory/USGS)

地球にはこれまでに無数の隕石が衝突し、地球の歴史を形作ってきた。地球にある(などの)重元素の大部分や、現在知られている生命の原材料物質も恐らく、隕石によって運ばれてきた可能性が高い。さらには、非常に大型の隕石の衝突が、恐竜絶滅の引き金になった可能性もある。

だが、現在でもまだ視認可能な衝突クレーターの数は極めて少ない。その理由は、天体衝突の痕跡の大半が、浸食作用とプレートテクトニクスによってずっと以前に消滅したからだ。「地球衝突データベース」には、天体衝突で形成されたことが確認されているクレーターが全世界で200個弱登録されている。

今回の研究をまとめた論文「The Luna structure, India: A probable impact crater formed by an iron bolide」は、専門誌Planetary and Space Scienceに掲載された。論文はここで閲覧できる。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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