陸上自衛隊東北方面総監を務め、軍事力に心理戦や情報戦などを絡めるハイブリッド戦争に詳しい松村五郎元陸将は「ブリンケン氏の発言は、中国による新しい動きを指摘したものです」と語る。松村氏によれば、ロシアが従来、2016年米大統領選などの場で、米国の社会的分断につけこむ情報・影響工作を展開してきた。中国は「中国式民主主義は選挙だけを重視する欧米の民主主義よりも優れた政治システムだ」などとして、自国の優位性を宣伝することに力を入れてきたという。
一方、バイデン米大統領は24日、中国のネット大手、字節跳動(バイトダンス)が運営する動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」を規制する法案に署名した。欧州連合(EU)欧州委員会もTikTokに対し、違反した場合に制裁金を科すEUのデジタルサービス法(DSA)に基づく正式な調査を行っている。松村氏は「中国政府が必要だと判断した場合、中国企業や個人は知り得た情報を提供しなければなりません。情報・影響工作で重要な、誰がどの分野に関心を持っているのかという情報を中国政府に与えることになりかねないと思います」と語る。
米国は今年11月の米大統領選に中国が介入することを警戒しているようだが、中国の狙いはそれだけだろうか。米国は今、「習近平が中国軍に対し、2027年までに台湾侵攻の準備を終えるよう指示した」という情報を盛んに流している。ブリンケン氏も習氏との会談で、台湾海峡の平和と安定を繰り返し強調した。
松村氏は「中国が大規模な軍事侵攻に踏み切れば、中国と台湾共に、軍事・経済で大きな損害を被ることになります」と述べたうえで、今後中国が取りうる方針として「懐柔路線」と「強硬路線」が考えられると、指摘する。