言うまでもなく、ウクライナに装甲車両を供与しているのはカナダだけではない。とくに米国とドイツ、ポーランドは、これまでに装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車を計数百両ウクライナに譲渡している。
2年2カ月あまり前にロシアがウクライナに対する戦争を拡大して以降、ウクライナの支援諸国全体では、装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車を合計で2000両ほど供与している。ウクライナがこれまでに失った旧ソ連製の装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車1000両ほどの補充に半分があてられたとすると、まだ1000両程度の余剰があると思うかもしれない。
問題は、2022年2月以降、ウクライナ軍の規模がほぼ2倍に拡大したことだ。ウクライナ軍が戦争拡大前に保有していた計2000両という旧ソ連製の装甲兵員輸送車と歩兵戦闘車の数は、当時のおよそ50個の旅団では十分だったかもしれないが、100個旅団に増えるとまったく足りなくなった。西側から供与された2000両を加え、失った1000両を差し引くと、1000両が不足することになる。
ウクライナ軍の指揮官たちもこれが問題になることはわかっていた。ウクライナ軍の機械化旅団のある将校は昨年、フォーリン・ポリシー誌に「われわれは何もかも必要としていますが、おそらく最も緊急に必要なのは歩兵戦闘車でしょう」と語っている。
カナダの産業界が新しい装甲兵員輸送車50両を新造・出荷するのに1年かかるのというのは、別に不思議ではない。むしろ、自由なウクライナの友人たちから見て不可解なのは、カナダ政府は工場で新しいバイソン50両が出来上がるまで待つ必要はないということだ。カナダ政府にはウクライナに装甲兵員輸送車をただちに送る選択肢があったし、いまもある。