「反シリコンバレー」の震源地
広さが約14平方キロメートルのエル・セグンドは、古くから米国の産業を支えてきた街だ。スタンダード・オイル(現シェブロン)は、1911年にベイエリアの施設が手狭になったため、この土地に2番目の製油所を設立した。第二次世界大戦中に航空機製造の拠点となったエル・セグンドでは現在、ボーイングやレイセオン、ノースロップ・グラマンなどの防衛大手が最大の雇用主となっている。しかし、2002年にスペースXが、2017年にアンドゥリルが、この街に拠点を構えて以来、この街は「反シリコンバレー」的なカルチャーの震源地となっている。両社を率いるイーロン・マスクとラッキーはともに、シリコンバレー的な価値観を否定している。マスクはまた、テスラのアイデアを思いついたのがエル・セグンドのシーフードレストランだったとも話している。
この街に最近やって来た起業家の一人が、ドローンとソフトウェアを用いて天候パターンを変えることを目指すスタートアップ、レインメーカーを立ち上げた23歳のオーガスタス・ドリコだ。大学を中退して150万ドル(約2億3000万円)の資金を調達した彼は、鍛え上げた筋肉を自慢する典型的なグンド系起業家で、Xのプロフィール欄には、「DMでデッドリフト(代表的な筋トレの種目)について語り合おう」と書いている。
起業家たちがよく利用する地元のレストランで、ドリコはベーコン3皿を平らげながら、この街の起業家たちが非常にエネルギッシュで、「サンフランシスコに居る猫背で物静かなソフトウェアエンジニアとは全く違う」と語った。
彼が経営するレインメーカーのオフィスでは先日、十数名の学生起業家たちを集めたピッチ大会が開催された。このイベントを主催したノースイースタン大学の学生のヤコブ・ディーペンブロックは、冷蔵庫に20キロの挽肉で作ったハンバーガーとモンスターエナジーを用意して、参加者にふるまった。「これが僕らの燃料なんです」と、20歳の彼はフォーブスに語った。