欧州

2024.04.30 17:00

ウクライナのプロペラ機、後部座席から銃でドローン撃ち落とす 第一次大戦さながら

ヤコブレフYak-52練習機(Shutterstock.com)

航空機同士による空での戦いの歴史は第一次世界大戦にさかのぼる。初期の空中戦は緩慢で、ほとんど滑稽とすら言えるものだった。当初、プロペラ推進式の偵察機に、前方に発射する機関銃は付いていなかった。そのためパイロット、というよりたいていは後部座席の偵察員が、みずからピストルやライフル銃を握って敵機を狙っていた。

それから1世紀あまりの時が経過したが、機上偵察員はいまだにプロペラ機の後部座席から小銃を撃っている。先週、ウクライナ志願兵の飛行隊に所属するヤコブレフYak-52練習機の射撃手が、ウクライナ南部オデーサの上空でロシア軍のオルラン10無人偵察機と交戦し、およそ10万ドル(約1600万円)のこのドローンを撃ち落としたもようだ。

ロシアによるウクライナに対する全面戦争において、第一次大戦で用いられた戦術や技術が復活するのは初めてではない。塹壕戦が繰り広げられているし、19世紀末に開発されたマキシム機関銃に由来する往時の銃が引っ張り出されている。最近話題の「亀戦車」の先祖も、第一次大戦期に見いだすことができる。しかし、機上の射撃手とドローンの空中戦というのは、過酷な戦争が続く現代のウクライナに出現した第一次大戦さながらの光景として、最も劇的な事例かもしれない。

オルラン10が撃ち落とされたとみられる様子は、地上からとタンデム複座のYak-52の内部からそれぞれ撮影された動画に映っている。映像では、1970年代に開発された重量1.5tのYak-52(巡航速度は時速160km強程度)が、重量15kgほどのオルラン10の周囲を旋回する。銃声が聞こえる。オルラン10は損傷したらしく、自動で展開したパラシュートに吊られながら下降していく。

低速飛行するドローンを、低速飛行する航空機から射撃手に迎撃させる。これはたしかに、速度の遅いドローンに低コストで対処する方策としてひとつの選択肢になる。

実際、現代のドローンが撃墜された最初期の事例のひとつも、まさにこの方法によるものだった。1990年代前半のコソボでのことだ。「セルビアの斬新な対UAV(無人機)戦術のひとつは、軍用のMi-8「ヒップ」ヘリコプターを(米陸軍のRQ-5)ハンターUAVの近くまで飛行させ、ドアから射撃手に7.62ミリ機関銃で撃ち落とさせる、というものだった」と、2000年の論文でJD・R・ディクソン米海軍少佐(階級は当時)は紹介している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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