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宇宙

2024.05.01 18:00

地球「第二の月」小惑星カモオアレワは月から生まれた

月の裏側にあるジョルダーノ・ブルーノ(Giordano Bruno)衝突クレーター。NASAの無人月探査機ルナー・リコネサンス・オービターが撮影(NASA/Goddard/Arizona State University)

地球の「第2の月」の小惑星Kamo’oalewa(カモオアレワ)は、月そのものから生まれたようだ。

コンピューターモデルを用いてこの結論を導き出した研究チームは、月の裏にある「ジョルダーノ・ブルーノ」と呼ばれる衝突クレーターがその発生源であることを明らかにした。

カモオアレワもその1つである地球接近小惑星(NEA、地球軌道に近づく軌道を持つ小惑星)は通常、火星と木星の軌道の間にある小惑星帯に起源を持つと考えられている。

カモオアレワとは

ハワイの言葉で「揺れ動く天体」を意味するカモオアレワ(仮符号2016 HO3)は、直径が40~100mで、自由の女神ほどの大きさがある。2016年に米ハワイにあるパンスターズ望遠鏡群によって発見された。パンスターズは、NEAの発見と追跡観測を目的としている。NEAは現時点で約3万5000個発見されている。

カモオアレワは、地球の準衛星の1つとされている。実際は太陽を公転しているが、地球からは地球を周回しているように見えるためだ。地球と1:1の軌道共鳴にあり、同期して動いている。


ジョルダーノ・ブルーノ・クレーター

専門誌Nature Astronomyに掲載された、今回の研究をまとめた論文によると、カモオアレワは、月の裏にあるジョルダーノ・ブルーノ・クレーターから生じたものだ。

ジョルダーノ・ブルーノは、幅約22kmの衝突クレーターで、月面にある同規模以上のクレーターの中では形成年代が最も若いと考えられている。100万~1000万年前の間に、直径約1.6kmの小惑星が月に衝突して形成されたと、研究チームは説明している。

今回の研究では、数値シミュレーションを用いて、カモオアレワほどの大きさの塊が生成・放出される可能性のある月への小惑星衝突をモデル化した。科学誌Scienceに掲載された解説記事によると、あらゆる可能性を調べるために、スーパーコンピューターで数週間にわたり計算を実行する必要があったという。

月の破片

カモオアレワが月から生じたことが示唆されたのは、今回の研究が初めてではない。2021年に米アリゾナ大学の天文学者チームが、同大などが運用する大型双眼望遠鏡(LBT)を用いた観測により、カモオアレワが月の大きな破片である可能性があることを示唆した。この研究結果は、カモオアレワの反射光のスペクトルが、他のNEAのどれにも似ていないという事実に基づくものだった。2023年には別の研究チームが、同様の結果を導いている。この研究では、過去数百万年間に衝突によって生じた月の破片が、可能性は低いとはいえ、カモオアレワの軌道に似た軌道に進入することがあり得ることを明らかにした。

月は、隕石や小天体の衝突で形成されるクレーターに覆われているが、衝突によって放出される月の物質は通常、再び月面に落下する。
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翻訳=河原稔

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