米ワシントン州立大学を中心とする研究チームは、タスマニアデビルが感染する伝染性がんの再生産数が減少しているとする研究論文を2020年に発表した。しかし英ケンブリッジ大学を拠点とする科学者と獣医の3人による研究チームはこのほど、2020年の研究結果と相反する新たなエビデンスを明らかにした。
2024年4月に発表されたこの論文によると、研究チームが2020年の研究を再現したところ、誤りを発見したという。この誤りが原因で、絶滅の危機に瀕しているタスマニアデビルについて誤った見通しが導き出されていたとのことだ。
タスマニアデビル(学名はSarcophilus harrisii)は、小型の肉食有袋類で、強烈な臭いを放ち、遠くまで響き渡るようなうなり声をあげる。かつてはオーストラリア大陸全域に生息していたが、3500年ほど前にオーストラリア大陸では絶滅した。人間が飼っていた犬が野生化したディンゴに襲われたのが原因とされている。
現在は、その名のとおり、タスマニア島でのみ生息が確認されている。オーストラリア大陸の南にあり、ディンゴに襲われる心配のない小さな島だ。夜行性で、全身が黒い毛でおおわれており、狩りはあまりせず、死んでいる動物や残された腐肉を漁って食べることが多い。嗅覚が優れているため、暗闇でも、腐肉や腐りかけた肉を見つけるのが得意だ。
食べ物をえり好みせず、死んだ動物なら何でも臭いを嗅ぎ分けて見つけ、昆虫や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類などを喜んで貪り食う。強靭な顎と、嚙みつくことに特化した歯牙構造をもっているため、他の動物の骨や毛、外骨格なども噛み砕いて食べることができる。
寿命は非常に短く、持病がない健康な野生のタスマニアデビルでも5年から6年だ。しかし、飼育されている個体なら、8年ほど生きる場合もある。