プーチン政権は、国民や政敵への弾圧を徐々に強めている。ロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降、こうした政治弾圧は一層強まっている。侵攻に関するあらゆる情報を封じ込め、ロシア政府が「特別軍事作戦」と呼ぶ偽情報の泡の中に自国民を閉じ込めておくためだ。ロシアの人権団体メモリアルによると、現在ロシアには600人以上の政治犯がいるという。実際の数はそれより多く、1000人を超えるのではないかと指摘する団体もある。
ロシア政府は長年、カラムルザを脅威と見なしてきた。カラムルザは野党指導者の故ボリス・ネムツォフ元第一副首相の側近で、人民自由党の副党首として議会選挙にも立候補していた。2015年にネムツォフが暗殺されると、カラムルザは米首都ワシントンとリトアニア首都ビリニュスの街路をネムツォフに関連する名前に改称するよう働き掛け、成功した。
こうした活動を理由に、カラムルザは2015年と17年の2度にわたり、ロシアの工作員による毒殺未遂事件の被害者となった。それにより、末梢神経に支障をきたし、動いたり感じたりする能力の低下を引き起こす多発性神経炎を発症した。