バークレイズのアナリストらは、二極化した市場では「(顧客に占める)ハイエンド消費者の割合が高い」企業や「価格決定力が強い」企業がリーダーになると指摘している。エルメスはこれら基準を明らかに満たしている。
実際、エルメスは今年8〜9%の値上げを計画する。バーンスタインのアナリスト、ルカ・ソルカはエルメスについて、「希少性」によって価値を高めるというイタリアの高級車メーカー、フェラーリのブランド哲学を「戦略面の核心的教義」として受け入れているようだとし、他社が消費支出の引き締めに苦しむなかで「価格を引き上げられるという強みから利益を得ている」と解説している。
バーキン人気続く
エルメスの定番バッグ、バーキンは、二次流通市場での価格が定価の2倍ほどまで高騰することもある。ソルカによれば、この「大きなプレミアム(上乗せ価格)」は、「すぐに入手できる」バーキンや「ケリー」のバッグへの非常に強い需要を反映している。バーキンやケリーは店頭ですぐ変えるようなものではなく、手に入れるのが難しいことで知られる。2021年には香港のクリスティーズで、18カラットのホワイトゴールドやダイヤモンドをあしらった「ヒマラヤ・ニロティカス・クロコダイル・ケリー」が、ハンドバッグとしては世界最高の400万香港ドル(現在のレートで約8000万円)で落札された。
「買えない」消費者による訴訟も
エルメスは富裕層にターゲットを絞った戦略によって高級ブランドのなかでの地位を固めた。だが、この戦略に絡んで訴訟にも巻き込まれている。米カリフォルニア州の消費者2人は3月、エルメスは「付属的な製品の十分な購入歴」がある顧客にしかバーキンを買えないようにしているとして、反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴した。フォーブスの推定では、エルメスの創業者ティエリー・エルメスの5代目子孫にあたるニコラ・ピュエシュの純資産額は26日現在152億ドル(約2兆3700億円)で、世界124位の富豪となっている。ピュエシュは2014年にエルメスの監査委員会の委員を退任したが、現在も同社株のおよそ5%を保有する。
(forbes.com 原文)