4月10日には日米両政府によって、日本の与圧式有人ローバーが月面に送られることが約束された。これはトヨタ社とJAXAが開発する「ルナクルーザー」が、早ければ2032年に打ち上げられることを意味する。実現すれば与圧式ローバーとしては史上初の運用となる。
自動車メーカーも宇宙を目指す
今回NASA(米航空宇宙局)が在米の3事業者に開発を委託したのは、与圧部を持たないバギータイプの有人探査ローバー。搭乗するクルーは宇宙空間にさらされるため、船外活動用の宇宙服を着用して乗ることになる。この車両は月面地形探査機(Lunar Terrain Vehicle)、通称LTVと呼ばれ、現状では2030年の有人ミッション、アルテミスVで使用される予定だ。選定された3社はそれぞれ提携企業とチームを組む。そこには宇宙開発企業のほか大手自動車メーカーも参加している。
インチュイティブ・マシーンズ
・提携企業/Moon RACERチーム(ボーイング、ノースロップ・グラマン、ミシュラン、AVL)
・提案金額/16億9200万ドル(2622億6000万円/155円換算)
同社は2024年1月に無人月着陸機ノヴァCを打ち上げ、民間企業として史上初となる月面軟着陸を成功させた。同チームにはミシュラン社のほか、各種EV(電気自動車)を研究開発するAVL社が参画。
ルナー・アウトポスト
・提携企業/Lunar Dawnチーム(ロッキード・マーティン、GM、グッドイヤー、MDAスペース)
・提案金額/17億2,700万ドル(2676億8500万円/同上)
同チームにはゼネラルモーターズ(GM)とグッドイヤーが参加。この2社はかつてアポロ計画で使用された月面ローバー(LRV)を開発した実績を持つ。
ベンチュリ・アストロラボ
・提携企業/アクシオム・スペース、オデッセイ・スペース・リサーチ・提案金額/19億2,800万ドル(2988億4000万円/同上)
ベンチュリ・アストロラボ社は、無人ローバーなどを手がけるベンチャー企業アストロラボ社と、フォーミュラEにも参戦経歴のあるEV開発企業ベンチュリ社との提携企業。同社がタッグを組むアクシオム・スペース社は、民間人をISS(国際宇宙ステーション)へ送る宇宙旅行を主催。2026年には民間宇宙ステーションの打ち上げを予定している。