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2024.04.30 09:00

米国防総省出身の起業家が設立、セキュリティ企業Sublimeが31億円調達

木村拓哉

Shutterstock.com

2016年半ば、ロシアの工作員が米国の大統領選挙に影響を与えようと民主党全国委員会のEメールに侵入していた頃、ジョシュ・カムジューは米国防総省のサイバーセキュリティ部門に勤務していた。そこで彼は、ネットワークに侵入するための最善の方法が、最も古い種類の攻撃の1つであるフィッシングであることを学んだ。

カムジューは2019年に、自身のサイバーセキュリティ企業Sublime(サブライム)を設立し、その頃に学んだことを応用し始めた。

現在では、ChatGPTのような生成AIツールによって、信憑性が高く、文法的に正しい悪意のあるメールを作成することが以前よりも容易になっている。「毎日行われているこのような大規模なキャンペーンは、より的を絞った方法で、攻撃を拡大できます」とカムジューは話す。サブライムは、独自のプログラムを用いて顧客のEメールを監視し、人々の受信トレイに押し寄せる人工知能(AI)が生成したフィッシングメールを発見できるようにしている。

サブライムは米国時間4月24日、インデックスベンチャーズが主導したシリーズAラウンドで、2000万ドル(約31億円)を調達したことを発表した。Decibel PartnersとSlow Venturesからの追加の資金調達も得たサブライムの累計調達額は3000万ドル(約46億円)以上に達している(同社は評価額を開示していない)。

サブライムは、今回の資金調達と同時に、スポティファイやレディット、エネルギー大手のセントリカなどの民間企業を顧客に加えたことを発表した。カムジューはまた、「主要な政治キャンペーン」との取り組みを開始したと述べている。

バイデン大統領やトランプ前大統領の選挙キャンペーンの担当者は、フォーブスのコメント要請に応じなかったが、政治団体が最先端のセキュリティ製品にアクセスするのを支援するDDC(Defending Digital Campaigns)と呼ばれる非営利団体は、サブライムのプロダクトをキャンペーンに提供していることを確認した。

「私の起業の原点は、国家の安全保障にあります。いま再び、この分野の取り組みに関わることに興奮しています」とカムジューは述べている。

サブライムのソリューションは、顧客全体のパターンを探せることを強みとしている。ある顧客がフィッシング攻撃を受けて、AIがその防御に成功すると、同社のソフトウェアは他の顧客にもその防御パターンを適用する。

同社のAIと機械学習の利用方法は、まったく目新しいものではないが、カムジューの軍事諜報に関する専門知識は、同社の検知アルゴリズムに「競合他社を凌駕する優位性を与える可能性がある」と元政府の諜報職員で現在はフロスト&サリバンの主席アナリストを務めるサラ・パヴラクは述べている。

「彼がそのような高度な知識を持つ人物で、国防総省で働いていたという事実は、大統領候補のような人々にとって大きな意味を持ちます」と彼女は説明した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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