スモール・ジャイアンツは、規模は小さくても大きな価値を生み出す企業を発掘するプロジェクト。登壇したのは、生方製作所の代表取締役社長の生方真之介、浅井農園代表取締役CEOの浅井雄一郎、コーワ代表取締役社長の服部直希。聞き手はForbes JAPAN編集長の藤吉雅春が務めた。
市場縮小、負債......危機をこう乗り越えた
「みなさん、業界の中で圧倒的な優位性を持っていらっしゃる。新たな利益の源泉となる新規事業に取り組もうとした時、どんなことがきっかけになったのでしょうか」。藤吉編集長の問いかけからパネルディスカッションは始まった。「事業を引き継ぎ、順調にいっていたら、自社ブランドの立ち上げなんてやる必要はなかったんですよ」と苦笑いしながら語り始めたのは、コーワ代表の服部だ。
「創業当初は、豊田自動織機と取引があり、高い評価をもらっていました。ただそこで終わっていたら今の弊社はなかったと思います。自動車に限らず、家電製品分野とさまざまなアプローチがあって今がある。しかし、主要取引先である自動車業界の環境が激変しています。その変化に対応すべく、自社が持つノウハウをどう最大化していくか。その答えが自社ブランドという選択になったのです」
創業90年という長い歴史の中で、幾度となく時代の波にさらされ、どんな状況になろうとも自分たちの強みを持ち続けてきたことが、新しい一歩に繋がったと語る。
自動車工場から食品工場、さらに家電まで、さまざまな業界の生産工程で使用されるブラシを作ってきたコーワ。服部は、「ブラシに関しては、我々が一番なんだ! 我々がやらなければ誰がやるんだ」と常にチャレンジを続けてきたとも。その結果生まれたのが、自社ブランドの「tanQest」だ。
続いて、歴史から言えばさらに古く、1世紀以上続いている浅井農園。先代までは花卉の家族経営を行っていたという。家業を継ごうと脱サラをして戻ってきた浅井が目にしたのは、2億5000万円もの負債だった。
「どうせなくなる会社なんだから、思い切ってやろう。我々は失うものは何もないところからの、第二創業なんです」と浅井。新たに手がけたのは、自身が嫌いだというトマトだった。
「たまたま食べたミニトマトが驚くほど美味しくて。もしかしたらトマト嫌いな子どもたちが好きになるトマトを作ればチャンスがあるのではと思ったんです」(浅井)