中国はイエレン長官がはったりをかけているととらえたかもしれない。だがそうではなかった。バイデン米政権は今月17日、これまでの方針を大きく変え、韓国ハンファグループのソーラー部門であるQセルズの請願を受け入れて輸入される中国製のソーラーパネルへの関税を復活させる考えを示した。そうすることで複数の国々が即座に中国に対抗することになるだけでなく、米中間紛争の2014年の世界貿易機関(WTO)の仲裁(部分的には中国が勝訴)を覆すことになる。また、中国は先月、米国の電気自動車(EV)購入補助金は不公平だとしてWTOに訴えたが、この措置に対する大胆な反撃でもある。
中国は再生可能エネルギーとその関連製品市場で米国を凌駕しており、米国の関税の動きを阻止したいだろう。現在、世界の重要鉱物の精錬の80%以上が中国で行われており、グリーンテックに使用される多くの資源における中国のシェアは圧倒的だ。この優位性は、中国が世界の70%を生産するリチウムイオン電池や、2023年時点で中国のマーケットシェアが83%のソーラーパネルなど、付加価値が高いものにも及んでいる。これらの生産は他国からうらやましがられるような優位性を中国にもたらし、それが売上にもつながっている。製品はソーラーパネルだけではない。中国の大手EVメーカーBYDは昨年第4四半期に52万台以上を出荷し、米大手テスラの48万台を上回った。
だが、中国企業があげているこうした利益の多くは公正でない貿易慣行や知的著作権の侵害によるものではあるが、それでもまぎれもない優位性であることに変わりはない。中国がかなりの利益をあげていることで、米政府はかつてタブー視されていた「保護主義」という言葉を敬遠しなくなっている。とはいえ、関税は万能薬ではない。中国の労働力は依然として安価で、重要な鉱物などの主要な材料は中国の方が安い。中国の5カ年計画に反しているが、中国人民銀行(中央銀行)が危機感を持っているために各銀行は産業向け融資を積極的に行っており、低金利で借りられる。そして、誰もが口にしないことがある。中国がグリーンテックに振り向けている多額の補助金だ。
「インフレ抑制法」や「ビルド・バック・ベター・プラン(より良い復興)」といった米国の措置はインフレに関連したもので、中国の取り組みとは比較にならない。対中貿易関係の正常化を支持した元米下院議員でWTO上級委員会の委員長を務めたジェームズ・バッカスは「米国と世界の経済・政治情勢の下では、関税を撤廃することはますます難しくなっている。関税を撤廃するには、まず関税を撤廃したいという願望がなければならないが、関税撤廃がバイデン政権にとって優先事項であると思わせるものはほとんどない」と話す。