アジア

2024.04.26 10:30

米国のグリーンテック課税方針、米中貿易戦争の新たな火種に

関税へと駆り立てられるのは理解できる。中国の現在のマーケット独占の多くは、かつての米国の自由貿易への傾倒を悪用した意図的な取り組みによるものだ。米中西部や東部の「ラストベルト(さびた工業地帯)」に並ぶ、選挙の勝敗の鍵を握る州では関税は票につながる。関税は重要性が増している産業部門を競争から保護し、少なくとも短期的にはラストベルトの雇用を守る。そして問題を部外者のせいにするような雰囲気を作る。だが、良い政治が必ずしも良い政策とは限らない。

関税は最終的に競争力を低下させ、グローバル競争の中では致命傷になりかねない。中国のメーカーを罰し、国家による補助金を抑制する政策もある。米政府は炭素国境調整メカニズム(CBAM)を選択することができる。CBAMは、製造時に排出される炭素を削減するための対策コストを勘案して産業にその費用を課すものだ(ただし、WTOのルールでは重大な懸念が生じる)。これは、米国と欧州の製造企業に決定的な優位性をもたらすもので、欧州連合(EU)は導入に向けて動き出している。米議会では超党派による複数のCBAM案がすでに練られている。

CBAMは市場ベースの排出権取引(ECT)制度と組み合わせて導入されるべきだ。ECTを活用すればグリーンテックのメーカーはより効率的に操業できるようになる。ECTはグリーンテック産業を活用し、公正でない外国の貿易慣行に対抗するためにどのようなシステムででも利用できるからだ。

残念ながら、ECTは実用的な市場ベースの手法であるにもかかわらず、米国では炭素取引をめぐって問題のある政治的なやりとりが続いているため、議会で現在検討されている案は確実に頓挫するだろう。一方、中国はすでにECTを有益なツールとして認識している。中国は2021年にECT制度を立ち上げ、国内メーカーにさらに有利になるよう、今年2月には拡大した。

米国と中国はともに、理解できるが危険なゲームをしている。関税は報復を招き、世界が関税を引き上げれば引き上げるほど、私たち全員の繁栄は失われる。ゼロサムゲームが進行し、自由貿易が徐々に損なわれているだけでなく、この国際貿易体制のほころびはWTOのような重要な機関を弱体化させているように見える。WTOは世界的な繁栄の基盤として過小評価されている。米国と中国が関税戦争から手を引き、攻撃し合う姿勢を改めなければ、米国はもとより世界中の消費者の暮らしは厳しいものになる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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