ビジネスリーダーやその側近たちが、企業や政府機関における危機管理の成功例と失敗例から学べることは多い。最近のニュースから事例をいくつか見てみよう。
テスラ
メディアとの対話を拒んだり、広報担当者を置かなかったりすることは、ビジネスリーダーにとって大きなリスクを伴う。緊急事態や災害、スキャンダルについて自社の見解を発信できず、ジャーナリストの重要な質問に答えられないため、危機に直面した際に組織が不利な状況に置かれるのだ。テスラは2020年に広報部門を廃止した。今では報道機関は、同社について報じるたびに決まって取材に応答がなかった点に言及している。たとえば4月15日、テスラが社員の10%を解雇する計画だと伝えたCNNは次のような一文を添えた。「テスラには広報部門がなく、報道内容についてコメントを求めたものの回答は得られなかった」
ソーシャルメディアへの依存
ただし、テスラの創業者イーロン・マスクは、ソーシャルメディア上で人員整理の必要性について説明している。CNNは以下のように報じている。「マスクは4月15日、Xに『われわれは5年ごとに社内の再編と合理化を行い、次なる成長段階に備えている』と投稿した。レイオフと2人のテスラ幹部、ドリュー・バグリーノとローハン・パテルの退任への反応を受けてのことだ」報道機関に直接対応しない、という同様のアプローチを採用している企業幹部は、危機における透明性と十分な情報開示に関して疑義を呼ぶリスクを抱えている。
ツイッター(現X)
そしてツイッター(現X)にも、もはや広報担当者はいない。これは、報道機関が同社からコメントや追加情報を得る窓口が存在しないことを意味する。米紙ニューヨーク・タイムズは以前、次のように報じた。「ツイッターには広報部門がない。かつてチームにいた社員は全員、マスクによる買収からまもなく退職したか解雇されたためだ。社内に広報担当者がいないということは、記者たちが同社の最新状況について記事を書く際、コメントを求める相手がいないということだ」
クライシスコミュニケーションにおいては、マスコミ対応とソーシャルメディアやその他のコミュニケーションチャネルを活用したバランスのとれたアプローチの採用により、危機に関する企業側の見解を効果的・効率的・戦略的に伝えることが可能になる。